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episode.1-18
「さっきからてめえの右目を見る度、妙な気になるのはその所為か。どうやら一つになりたいと俺の身体が無意識に求めてるらしい」
「ああー…余計な話しなきゃ良かった…」
「良いからさっさと脱げよ面倒くせえな」
強姦か。この野郎、もう殴ってやろうか。
いや殴るったって両手が塞がれていた。自分の無力さに哀しくなってきた。
胸の内で誰に宛てたとも知れない謝罪を並べる。萱島はベルトへ掛かる手を認め、今度こそ青褪める。
「ま、やめ…止めろ相模さん…!!言っときますが俺の下半身は戦意喪失するレベルのヘビー級で、見たら必ず後悔するぞ!良いのか!」
「自分でハードル上げて楽しいか?そんなん言われたら余計に見たくなるわ」
「…ええ、まったく仰る通り……畜生、俺が何したって言うんだ。そりゃまあ多少悪い事もしてきたのは認めますが、いきなり出向だの良く分からん調査会社だの…会社は暗いし、部下は怖いし、AVばっかあるし、暗いし…あ、文句じゃなくて…すみません、副社長…待った、待…わーーっ!!」
チャックが下ろされる寸前、萱島は突如圧し掛かる重みに目を瞬いた。
現状が掴めず、ふいと視線を其方に下げる。
うつ伏せに倒れ込む均整の取れた体。
どうやら彼は漸く今、安らかな寝息を立ててお休みになったらしかった。
「………」
あんなに弱体化していたのだ。当然の結果だ。
萱島は無言でその身をどかし、苦労してきちんと寝かせ、側にあった自分のジャケットを放り投げた。
タイミングよく机に放置された携帯が点滅する。
午前0時を知らせるアラームライトは、数度動いたのみで事切れた。
(…スパゲッティが冷めた)
無言で立ち上がり、萱島はキッチンの忘れ去られた名も無きパスタへ会いに行く。
取り上げて一口食すと、何だか凄まじい疲れから壁に額を押し付けた。
「家に帰りたい」
残念ながら叶わぬ願いだ。
砂糖を入れ忘れたパスタは、彼の心情を表すかの如く酸味を主張していた。
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