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episode.1-17

「色が違う…右と左の…」 息を乱しながら指摘する。 相模は主語を考え、思い至ってああと納得した。 「事故で左だけ若干薄いらしいが、それが何だよ」 「事故…?見えてるんですか?」 「角膜は移植したから見えてる。日記によればもう10年も前の話だ」 どうでも良いだろ。言って気に留めず再開しかける相模は、しかし萱島の次の台詞でぴたりと静止した。 「10年前…?俺もやりましたよ角膜移植。9月の中頃に、アメリカですが」 想定外の内容へ伴い、相模の眉が吊り上がる。 「奇遇だな。国まで同じか。確か俺の場合、脳死患者から提供された角膜で、受けたのは大学の付属病院だったか」 「…大学名は?」 萱島の方も何か、信じ難いものに出会した形相で身を乗り出していた。 「ロレイン大学。何だ?知人でも働いてたか?」 「俺の右目角膜の提供元も其処だ。頭部外傷による脳死患者からの移植、正確な日付は9月の17日…」 「冗談だろ」 さしもの男も目を丸くする。 「まさかお前と俺の目が同一人物のモノだって?それが今日偶々、何の計らいも無く出会ったと…まるで梲(うだつ)の上がらねえヒューマン・ドラマだな」 「…まあ正直、あんまり気分は良くない…」 ちらりと相手を伺った。 どうも良い具合に事の中心がずれてきてはいないか。 「しかし…ほらせっかく運命の再会を果たしたんですから、どうですか副社…じゃねえや、こんな所で寝っ転がってないで一杯引っ掛けにでも行きましょうか!」 「なーにが運命の再会だ。それなら尚更犯してやるよ馬鹿野郎」 何故そうなる。せっかくの提案を足蹴にされ、萱島はつい現実から顔を覆っていた。

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