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extra.2-1 「件の2人+エロゲニスト」

珈琲を片手に歩いていた牧が首を傾げた。 スクリーンの手前、主任と戸和の席に淀んだ空気が流れていた。 「何だどうした、ついに競馬見てんのバレたのか」 「いや…さっき下で調査員と組手してたら、ヒートアップして救急車呼ぶハメになったらしい」 あのナリで主任ときたら。 呆れる牧を他所に、海堂は液晶画面を睨み続けていた。 ただ背後から覗けば、デスクトップには件の2人が映り込んでいる。 今日もウチの童貞は、元気に盗視に励んでいた。 「戸和ー、戸和くーん…」 萱島は隣の部下の名を呼んだ。 もう何回目になるか知れないが。 一瞥すら寄越さない相手に、次第に声がか細くなる。 完全なる無視。 清々しいまでの態度に、上司はと言えばもう半泣きだった。 「俺…僕が悪かったと…思っています、その…少しは話を…」 斜め後方から表情を覗き込む。 視線はPC画面から一寸も外れない。 軽快なタイプ音のみが響き、戸和は沈黙したままだ。 萱島は眉尻を下げ、ずるずると頭を垂れ、ついにそのまま机上へと突っ伏した。 「…話聞こうよ…もう1時間だよ……いい加減…」 様子を見守る、牧と海堂の方が居た堪れなくなってきた。 「……ごめんって」 臥せった上司が断末魔を発する。 おい、流石に返事くらいしてやっては如何か。 牧は絶対零度の副主任へ人知れず念を飛ばす。 「…おいアレそろそろ泣くんじゃないか」 「ああ、その時は俺が涙を拭いてやるだけさ」 「クソ童貞が格好付けんなや」 静観していれば何か、俄にむくりと萱島が身を起こした。 そのまま、何か言うのかと思えば姿勢を正し、黙って添削を再開し始める。 うわ、めんどくさっ。 酷い面を認めた牧は思わず呟いた。 お子様が完全に拗ねていた。 本部のツートップ間に、要らない冷戦が勃発した。

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