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extra.4-1 「主任10分間耐久」

間宮孝司の嗜好は凡そ年上に傾いていた。 優しくそれとなくリードしつつ、寛容に全てを包み込んでくれる温かさ。 過去の恋愛を照らし合わせてみても、殆どテンプレートに当て嵌まる。 要するに大人で落ち着いた恋人こそ正義だ。 (…それがどっこい、何があった孝司) 休憩所の椅子に掛け、珈琲缶を手に嘆息した。 最近めっきり思考を奪う人間を浮かべ、更に気分が滅入った。 (顔か、顔なのか) 確かに好みだが。 ぼんやりしていた矢先、当人が現れてしまった。 間宮を見つけるなり、満面の笑みで寄って来る。 確かに可愛い、顔は可愛い。 「間宮、休憩?昼飯?」 「そう、休憩中なんで来ないで下さい」 「お前…それはどういう…」 割と本気でショックを受けていた。 此処で拗ねると後が面倒だ。 仕方なくコンビニの袋を探れば、ちょろちょろと傍へ近づく。 間宮は何故か食べたくもないのに買ってしまった、新製品のマシュマロを開封した。 「食べます?」 相手の目が面白い様に輝く。 この上司は常に糖分を求めていた。いや、最早糖分を生命源に生きていた。 隙間なく座る距離感へ、一寸息が詰まる。 相変わらず近い。寧ろくっついている。 「パッケージ見せるなよ。何味か当てるから」 「簡単に分かるわこんなもん」 早々と斬るも、嬉しそうに手を出す大人に黙った。 渋面を作ってマシュマロを乗せてやる。 何事も逐一楽しそうで羨ましい限りだ。 「分かりましたか」 「…ら、ラムネ?」 「残念、“期間限定さちのか苺味”でした」 咀嚼する萱島が唖然と固まった。 固まりたいのはこっちだった。

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