204 / 238
(Side鈴)
…………ここ…………落ち着く……………………
……暗くて……誰もいない…………狭い場所……
……誰にも邪魔されない…………好きなだけいられる…………だけど………………なにか大切なことを忘れている気がする……………………なんだっけ……
…………なに……うるさい………………………
外が騒がしい…………この声……なに…………
思い出さなきゃいけないなにかがある……
けれど思い出したくない……………………
でも思い出せないと大切ななにかと会えない気がする…………どうしてそう思うんだろう……………
『…………ん…………り………………りん…………鈴』
聞いたことある声が外から聞こえる………………
あぁ……落ち着く声…………………………………………
初めて聞くはずなのに初めてじゃない感じがする……………………君は…………だれ………?………………
『……かえっ……きて…………り…………す…だよ……』
かえっ……きて?…………帰ってきてっていってるの?…………俺ここから出たくない………………
ずっとこの暖かいところにいたい……………………
…………もう……このままでいいよ……………………
『鈴……好きだよ…………早く……目を開いて……』
………………え?………………俺、目、開いてるよ…?
……………………開いてるのが見えないのかな……
目を開けていることを証明するために…………
………………俺はこの暗い部屋の中の扉を探した……………………
扉ないじゃん………………あぁ…なんか……目を開いてるって証明するのもめんどくさい………………
……もう眠いよ………………寝ていい……?……………
寝そうになっていると……………………
『……鈴!!鈴っ!!嫌だ……いくなっっ!お願いだっ…………お前に……俺は…………伝えたいことがあるんだ…………行かないで……………………
お願いだから…………そばにいて………………いくな…………』
その切ない声を聞いて…………あ……と思い出す…………
この声……晴也だ…………そうだ…………俺……帰らなきゃ…………ここから出て…………晴也のもとに……
ごめんね…………遅くなったね…………今帰るよ……
…………愛しい人…………………
俺は暗い部屋から出るために壁を叩き始めた…………
バリンっと音を立てて……壁が壊れた…………
眩しい…………………
上を見上げると……目の前には…………
……げっそりと痩せた……愛しい人がいた……
あぁ…………こんなに泣いて…………
俺はそろそろと手を伸ばして……涙を拭った…………………
目の前の愛しい人は……驚いた顔をしたあと……安心したかのようにポロポロと涙を零し始めた…………俺の手にスリスリと頬を擦り付けて……
晴「おかえり…………鈴…………っ……」
鈴「ただいま…………晴也…………」
ともだちにシェアしよう!