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闇が支配する空が一瞬眩いほどの光に照らされる。同時に耳を劈く雷鳴が響き、周囲の木々を震わせた。
鋭い閃光に照らされた暗い部屋には、激しい息遣いと衣擦れの音、そして小さな嗚咽が響いていた。
強く握られたままのシーツは汗と涙で濡れている。
自身の中に放たれた熱いモノがジワリと広がり、体を変えていく。
「――これが、運命なのか」
奥歯を食い締めて背中に覆いかぶさるように体重をかける男の鼓動を聞くともなしに聞いていた。
繰り返される口づけに、背中の皮膚がチリリと焼けるような痛みを伴う。
しかし、その痛みさえも愛おしく感じるのは彼だからだろう。
「運命を呪いますか?」
掠れた低い声に、ただ唇を噛みしめて下肢から与えられる快感にギュッと目を閉じた。
鼓膜を震わせる声にさえも体は敏感に反応してしまう。
熱い呼吸を繰り返しながら、首筋にあてがわれた鋭く硬い牙に肌が粟立つ。
耳元で聞こえる荒い息遣いと躊躇なく皮膚を突き破る牙の感触に、身を強張らせてシーツを手繰り寄せた。
「あぁぁぁ……っ」
その衝撃で体内にある強烈な圧迫感を与えていたモノを食い締める。
ビクビクと脈打つそれは、何度達しても力を失うことはなかった。
「んあっ……あぁ……ん」
栗色の髪を乱し、小刻みに痙攣を繰り返す体を力強い腕が抱きしめる。
委ねてはいけない。まして、愛してはいけない者だった……。
そう思えば思うほど、その熱が心地よくて堪らない。
何物にも代え難い安心感と温もりに、自然と声が漏れる。
「あ、愛して……。俺を、愛して……っ」
再び建物を揺るがす轟音と共に閃光が夜空を横切る。
その光に照らされた二人の影は美しく、今はまだ見えない愛に満ちていた。
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