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☆9

『ふ、ふーんだ!もう いいや。』 『だな。美味しいパン食べられたし。』 孝之介には敵わない、そう判断した2人は 攻撃を止め 帰ることにしたようだ。 『あれ?帰るんだ。もういいの? 気はすんだのかな?』 『うっさいよっ!じゃあな!』 『じゃあな!』 自転車に向かう2人に、俺も声をかける。 『蓮、佑真!またなー!』 『大和、バイバイ。』 『大和、また明日。』 最後に、こちらを振り向き・・・孝之介に べーっと舌をだして2人は帰っていった。 ───子供かっ! 2人が帰った後、またベンチに座り、 別のパンを取り出して、かじりつく。 今度はカスタードクリームとブルーベリージャムが 真ん中にあるデニッシュパン。 今日中に食べなきゃいけないヤツだ♪ ああー!やっぱり・・・うまい! 幸せ過ぎて、顔がにやける。 そんな俺を見て、孝之介も フッと笑う。 『気に入った?あのパン屋。』 『あ・・・うん!ありがと。』 『よかった。』 『しばらく通う!で、全種類制覇する!』 『はは。小遣い 吹っ飛ぶね。』 『いやー、パンのためなら平気!』 『ホント、好きだね~。』 『うん!大好き!!』 『・・・俺も・・・好きだよ。』 孝之介は、そう言って・・何故か俺の顔を じーっと見つめてくる。 え?・・・・な、なに? 好き? そのまま、目を反らさない孝之介。 瞬きもせず、見つめ続けてくる。 『好きなんだ・・・・・。』 『え・・・・・?』 え・・・・? す、好き・・・・? 『好きなんだ。・・・・・・・・・・パンが。』 『へ・・・・・・?』 ───パン? 好きって・・・・! ・・パンかよーっ!! な、なーんだ・・・ ビックリしたぁ・・・! 『はは、変な顔。それ食べたら帰ろうか。』 『う、うん・・・。』 急いで、残りを食べる。 もったいない事に もう味なんて分からなくなってしまった・・・。 『・・・・♪♪』 孝之介は鼻歌なんて歌っちゃって、 もう いつもと変わらない。 くそぉ。 なんなんだよ!コイツ・・・・! 俺をからかいやがって・・・・ ちょっと、ビビったじゃねーか。

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