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『・・・え?孝之介じゃないの?』 『うん・・・俺が好きなのは・・・』 蓮・・・・お前だよ。 言いかけて、ハッとする。 ダメだ! 言っちゃ、ダメ・・・っ! 現状維持! 友達でいるって決めただろっ! 『・・・蓮の・・・知らない人、だよ・・・』 膝の上の手を強く握りしめて、 なんとか言葉を絞り出す。 言ってしまいたい。 ホントは。 知ってほしい。 ホントは。 でも、言ったら俺たちの関係は 終わってしまう。 それはイヤだ。 友達でいい。 友達でいいから・・・・ 隣にいたい。 ────蓮は俺を見て・・・ 寂しそうな顔で笑った。 『そ、・・・そっか、いるんだな、好きな人。』 ───そんな蓮に、 俺は、内緒で告白をする。 『うん・・・すごく すごく好き・・・なんだ。』 蓮だよ。 俺が好きなのは蓮なんだ。 ・・・言えないけど。 俺は蓮が好きなんだ。 ・・・言わないけど。 『・・・・・。そっか・・・・』 蓮も、それ以上は聞いてこなくて。 黙りこむ俺たち。 静寂の中、テレビからアイドルの上手いとも 下手とも言えない歌だけが 場違いに、賑やかに響いていた。

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