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A面 保育園児 さいとうりょうま 3歳
ゆきせんせい、ぼくの方が早い時間から保育園にいるからって気にしなくていいんだよ?
先生たちは決まった時間に来ればいいの。定時で来て、定時で帰るの。それがちゃんとした大人なんだから、胸張ってなよ。
ぼくんち、急にママがいなくなって、3歳のぼくひとりで家にいるわけにはいかないからね。24時間やってるここの保育園に入れてよかったんだよ。
せんせいは優しいね、そんなかなしそうな顔しないでよ。大人が可哀想にと思った瞬間から、ぼくは可哀想な子供になっちゃうんだよ。
ところで、ゆきせんせいっておしゃべりなひと? ひみつにできる? ぼくのひみつ、教えてあげる。
ぼく、天の神様が決めた仲良しが誰と誰だかわかっちゃうんだよ。運命の人は光がつながって見えるんだ。
ママが出て行ったの、ほんとはぼくのせいなの。ぼくがママを送り出したんだ。
パパの定期入れにはすごく大事な写真が入ってて、そこに写ってるのがパパの本当に好きな人。世間体が大事でお見合いして私と結婚したのよってママはよく泣いてた。
そのうち、火曜日に牛乳とか野菜を届けてくれるお兄さんとママが仲良くなってね。ママ嬉しそうだったの。なのにだんだん辛そうになったんだ。ママ、ぼくの顔見ると泣きそうになってた。
だから、ぼくがエイって送り出したの。だってもう3歳だから、アーンしてくれなくてもご飯が食べられるし、コップも洗える。紙オムツもぬらさない日が多くなった。洗濯物たたむのも上手だよ。
ぼくね、見たらわかるんだ。
ママの、神様の決めた人は牛乳のお兄さんなの、わかってたから。大好きなママに笑っていてもらえたら嬉しいから。だからあの日、行っていいよ、ぼくはパパといるからって言って、ドアの鍵をぼくが閉めたの。
……ゆきせんせい、そんなに目ぇ開いたらお目々が落っこちるよ?
ねえ、ゆきせんせい、この話はパパには内緒だよ?
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