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テストも近いからって理由で俺、今城ハヤテは友達の家に呼び出されたんだ。
俺の友達、緒方千春は成績よし、運動よし、顔もまぁ良し、っとまぁこうよく出来た出○杉君であった。
特に勉強に関してはずば抜けていて、定期テスト後に個人に渡される順位表には1桁が並ぶらしい。
なんてやつだ。小学校から高校までずっと同じ教育を受けてきたはずなのに。
と、まぁ今からその緒方の家に行く。もちろん勉強するつもりだ。「みんなが入るから」って理由で選んだ自然科学コースで、自分の学力に限界を感じていた頃だからちょうど良かった。
俺は部活帰り、疲れきったその足で自転車に跨った。
秋が近づいてきたからだろう、サドルのひんやりとした冷たさを布越しに味わう。
日も沈み、風が冷たい日だった。
夏に比べ日が沈むのがだいぶ早くなった。明日からベストがいるな、などと考えながら俺は自転車をこぐ。
彼の家に着き、自転車を止める。インターホンを鳴らし、乱暴に「おい」と呼び出した。
彼の親がインターホンに出ていたらかなり印象の悪い友人だと思われるだろう。しかしそんなことは滅多にない。両親共働きで帰ってくるのは真夜中であると、彼が小学生の時愚痴のように何回も言っていた。
扉の開く音。革靴がコンクリートの階段を鳴らす。ガチャッという鍵を開ける音がした後、白いカッターシャツにジーンズという清潔な服装をした男が門を開けた。緒方だ。
「お前その私服、制服と変わんねーよ。変えろ変えろ」
彼の服装にちゃちゃを入れながらも、家へ上がり込む。カモミールの香の匂い。嗅ぎ慣れた彼の家の匂いだった。
「うるさいな、ラフでいいと思うけど」
笑いながら彼は言う。
その後、俺を自分の部屋へ行くように促した。
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