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第67話 なにも片付いてないけど……。

このままではソファーで寝ちゃうなぁ。 ちょっとだけのうたた寝。 だから、少し寝たらベッドへ行く。 目は閉じたまま、開けられない。 護の件、ちゃんとしとかなくちゃいけないよなぁ。 なのに、思い浮かぶのは違う顔だ。 小バカにしたような笑顔でも、珍しくバカ笑いした顔でも、眉間をよせた小難しい顔でもなく。 2年前の二学期の始め、初めて龍ヶ崎に出会ったときの顔だ。 オレの顔を見て、すごく優しそうに笑った龍ヶ崎の顔だ。 こんな状態で、なぜ、そんな顔を思い出すのか。 セックスしているとき以外で、たくさんの会話をしたからかもしれない。 ふだんはお互いに、やってるときしか話さないから。 ていうか、するときしか一緒にいないから。 会話は必然的にそのときになるわけで。 それ以外での会話が少し増えたのは、風紀委員になった先週からだ。 父さんのこと、知ってたな。 ……他家の子供となに話してんだよ、父さん。 龍ヶ崎だよ? 龍ヶ崎は、国内より海外にシェアの拠点をおいている企業だ。 うちは国内中心でやっているグループ企業で。 なんらかの提携はしていると思うけど、他所様の子供と仲良くなってんじゃないよ、まったく。 オレは龍ヶ崎の親父さん、知らないのに。 なんかさぁ不公平だよなー。 外の世界を知ってて渡り歩いている龍ヶ崎。 学園という狭い世界しか知らないオレ。 太刀打ち出来るものが、なにもない。 体の弱かったオレは、人と比べないような教育を受けてきたけど。 しょせん人間だもん。 人と比べて優劣を探してしまう。 自分より優れた人間に憧れても、自分以上にはなれない。 悟りに似た教育を受けてきたのに、体が丈夫になったら欲が出てきた。 そもそも立ち位置が違うのに。 同等に肩を並べたいと思ってしまう。 龍ヶ崎が友達を連呼するから、変なことを考えてしまうんだと思う。 セックスフレンドと、断定してくれ。 じゃないと、本当に友達になってしまいそうで怖いよ。 友達になったら、エッチはしなくなるのかな? あ、 あれじゃないよな? 告白されて、すぐに振るのは気が引けるから、 『まずは友達から』 と、いうあれ。 お友達付き合いから、情がわいて恋愛に発展していくやつ的な? オレたちの場合は、肉体関係が先だから、あとから友情が芽生えて、愛が育つ。 な~んて、絶対にあり得ないから。 まじ、眠い。 意識が落ちる寸前に、傘も忘れてきたことに気づいた。            【 了 】

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