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第10話

───ピチャ……ッ…… 水音にサシャが目覚めた時、背後からクラウスにもたれるようにして、バスルームで猫脚の浴槽の中にいた。 「起きた? サシャ」 気付いたクラウスがサシャの濡れた黒髪にキスをした。 「あんなに感じてくれて、嬉しいよ。淫らで、とても可愛かった」 「……ッ!!」 サシャの体が湯の中でビクリと跳ねた。 我に帰り、己の痴態を思い出す。 あんな……あんなモノ、二度と嫌だ! 「……アレは、もう……嫌だ……」 「サシャ?」 サシャはクラウスの胸にもたれるようにして振り返り、頬に頬を寄せ、甘えるように哀願した。 「もう、しないでくれ……お願いだ」 その可愛らしい仕草に魔術師はたまらず、背後からサシャの唇を奪った。 サシャは素直にキスを返し、自らの舌を絡めた。 「……ああ、サシャ。とても可愛い。もう、アレは使わないよ」 サシャはホッとした様子でクラウスに身を委ねた。 かよわく、従順に、まるで媚を売るように自分の腕の中にいるサシャに愛しさが募る。 だが、満月になれば…… サシャの魂は狼の誇りを取り戻すだろう。クラウスの手が届かない領域に、その心を飛ばすのだ。 ───だから、こうして……再び限界まで君を責めよう。 クラウスは心の内で陰鬱に囁く。 サシャの体を傷付けることのない蟲や玩具を大量に入手した。 ───約束通り、今日の蟲はもう使わない。他にもまだ、たくさん用意してあるからね。 満月の度に蘇る狼の心を何度でも壊してあげる。 「愛してる。サシャ。愛しているよ」 「……」 魔術師はサシャを強く抱き締め、呪いのような愛を囁いた。サシャはもう何も言わず、クラウスの言葉を受け止めた。 ───愛してる。君は永遠に私のもの。 end.

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