97 / 151

幸人4

「やぁ、あ! あ! 出るぅ……ああ」 「……いいぞ……何度でもイケばいい」 犬塚はイヤイヤと首を左右に振った。 「ちが……ちがう…の出る……あ! だめ!そこ、やめ……ッああ!」 「おもらしか。淫乱め。見せてみろ」 「あっあっ……も、だめ、イク……あ、漏れる……ッ!」 汗で張り付いた黒髪。紅潮した頬。泣き濡れて、善がり狂う顔。 何もかもをさらけ出した犬塚に竜蛇は愛しさを募らせる。 「見せろ。幸人。お前の全てが欲しい」 「あぁ……見て……俺を、見て……も、漏らすからぁ……あああッ!!」 犬塚は竜蛇に見て欲しいと願った。 この男はどんなに無様な姿であろうと、どんなに淫らな姿を晒そうとも自分に失望しない。決して自分を手放さない。 そう思った……そう思いたかった。 「ぅあ、あぁああ───ッッ!!」 犬塚は小便を漏らしながら、ぶるぶると痙攣した。それはペニスカバーの隙間から幾筋も溢れた。 竜蛇も犬塚のきつい締め付けに抗わず、再び犬塚の雌犬の孔で射精した。 「はっ……」 「ああ……あつい……奥、きもちぃ……あ」 乱れた息を吐き出しながら、竜蛇はローターのスイッチを切る。 まだ繋がったまま、竜蛇は犬塚を抱きしめた。汗に濡れた肌と鼓動が重なる。 「……愛している」 「あ……」 犬塚は竜蛇を愛しているかどうか分からなかった。愛していると告げられても返す言葉を持っていない。 だが竜蛇は気にしていないようで、いつもの微笑を浮かべている。 「どんなお前でも構わないと言っただろう」 「竜蛇……」 「ああ、だがひとつだけ。セックスの時は志信と呼んでくれ」 「……」 「俺を志信と呼ぶのはお前だけだ」 そう甘く囁き、ずるりと男根を引き抜いた。犬塚は喪失感に震えた。 「抜くな……」 「少し待て」 体を起こして犬塚の足首の縄を解いた。ペニスカバーを外して、犬塚の濡れた下肢をシーツでお座なりに拭いて、ベッドの下に放り投げた。 乳首のクリップも外し、犬塚を伏せにして腕の拘束も解いた。 お互いに生まれたままの姿で抱き合う。竜蛇の裸の胸から伝わる鼓動に犬塚は安堵する。 「もう一度呼んでくれ」 「……志信」 「お前に名を呼ばれるのが好きだ」 「志信」 「愛しているよ。幸人。忘れるな。俺を支配しているのはお前だけだ」 縛り、犯し、支配しているのは竜蛇のようだったが、愛し、夢中になっているのは竜蛇の方だと言う。 だからこそ、犬塚が竜蛇を支配しているのだと。 「……あっ」 胸を合わせるように横向きで寝たまま、竜蛇が犬塚の片足を抱え上げた。ゆっくりと男根を犬塚のアナルに埋めていく。 先程までの激しさが嘘のようだ。波のリズムのように緩やかにセックスを再開した。 「ああ……志信……あ」 何度も自分の名を呼ぶ犬塚の甘い声音に竜蛇は酔い痴れる。犬塚の少し掠れた声が耳に心地好い。 唇を合わせて抱き合い、二人はひとつになって揺れ続けた。

ともだちにシェアしよう!