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幸人4
「やぁ、あ! あ! 出るぅ……ああ」
「……いいぞ……何度でもイケばいい」
犬塚はイヤイヤと首を左右に振った。
「ちが……ちがう…の出る……あ! だめ!そこ、やめ……ッああ!」
「おもらしか。淫乱め。見せてみろ」
「あっあっ……も、だめ、イク……あ、漏れる……ッ!」
汗で張り付いた黒髪。紅潮した頬。泣き濡れて、善がり狂う顔。
何もかもをさらけ出した犬塚に竜蛇は愛しさを募らせる。
「見せろ。幸人。お前の全てが欲しい」
「あぁ……見て……俺を、見て……も、漏らすからぁ……あああッ!!」
犬塚は竜蛇に見て欲しいと願った。
この男はどんなに無様な姿であろうと、どんなに淫らな姿を晒そうとも自分に失望しない。決して自分を手放さない。
そう思った……そう思いたかった。
「ぅあ、あぁああ───ッッ!!」
犬塚は小便を漏らしながら、ぶるぶると痙攣した。それはペニスカバーの隙間から幾筋も溢れた。
竜蛇も犬塚のきつい締め付けに抗わず、再び犬塚の雌犬の孔で射精した。
「はっ……」
「ああ……あつい……奥、きもちぃ……あ」
乱れた息を吐き出しながら、竜蛇はローターのスイッチを切る。
まだ繋がったまま、竜蛇は犬塚を抱きしめた。汗に濡れた肌と鼓動が重なる。
「……愛している」
「あ……」
犬塚は竜蛇を愛しているかどうか分からなかった。愛していると告げられても返す言葉を持っていない。
だが竜蛇は気にしていないようで、いつもの微笑を浮かべている。
「どんなお前でも構わないと言っただろう」
「竜蛇……」
「ああ、だがひとつだけ。セックスの時は志信と呼んでくれ」
「……」
「俺を志信と呼ぶのはお前だけだ」
そう甘く囁き、ずるりと男根を引き抜いた。犬塚は喪失感に震えた。
「抜くな……」
「少し待て」
体を起こして犬塚の足首の縄を解いた。ペニスカバーを外して、犬塚の濡れた下肢をシーツでお座なりに拭いて、ベッドの下に放り投げた。
乳首のクリップも外し、犬塚を伏せにして腕の拘束も解いた。
お互いに生まれたままの姿で抱き合う。竜蛇の裸の胸から伝わる鼓動に犬塚は安堵する。
「もう一度呼んでくれ」
「……志信」
「お前に名を呼ばれるのが好きだ」
「志信」
「愛しているよ。幸人。忘れるな。俺を支配しているのはお前だけだ」
縛り、犯し、支配しているのは竜蛇のようだったが、愛し、夢中になっているのは竜蛇の方だと言う。
だからこそ、犬塚が竜蛇を支配しているのだと。
「……あっ」
胸を合わせるように横向きで寝たまま、竜蛇が犬塚の片足を抱え上げた。ゆっくりと男根を犬塚のアナルに埋めていく。
先程までの激しさが嘘のようだ。波のリズムのように緩やかにセックスを再開した。
「ああ……志信……あ」
何度も自分の名を呼ぶ犬塚の甘い声音に竜蛇は酔い痴れる。犬塚の少し掠れた声が耳に心地好い。
唇を合わせて抱き合い、二人はひとつになって揺れ続けた。
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