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Ⅰ:1
回る回る、俺の世界。
そうして回る度に世界はどんどん狂ってく。
腹立たしい程、気色悪く狂って行くのだ。
「なぁ上代。言い値を払うから、今直ぐ俺を抱いてくれないか」
俺の言葉を理解するのに少々手こずったのか、同室者である派手な容姿の色男、上代は、少し間を空けてからやがてニンマリと笑った。
「可笑しいな、次男くんだけはマトモだと思ってたんだけど?」
◇
俺には兄弟が三人いる。
十歳上の兄【諒 】と、俺【紫穂 】の双子の弟である【和穂 】。
そして、一つ歳下の弟【由衣 】。
俺以外の三人はタイプは違えど皆美形。
和穂とは双子であるから多少俺と似ているが、パーツの配置が違うだけでこんなにも残念に仕上がるのか…と言った感じの出来が俺だったりする。
教師よりもホストの方が似合いそうな諒は、涼しげな王子様タイプの美形である和穂がお気に入りだ。そして和穂も諒が大好きで、良くふたりは恋人の様にイチャついている。
そんな諒と和穂は何故か俺を目の敵にして嫌うが、俺から言わせれば兄弟でイチャつくお前らの方がよっぽど気色悪くてウザイ。
かと思えば、何故か末っ子の由衣は俺にベッタリだったりする。
由衣は家族の中では一番小柄で、そして女の子顔負けの可愛らしい容姿をしている。
末っ子であり加護欲をそそられる容姿の由衣を両親は酷く溺愛しているが、由衣は俺と同じで諒と和穂とは折り合いが悪く俺にしか懐いていなかった。
でも、俺はそんな由衣が嫌いだ。
俺を馬鹿にして蔑ろにする諒と和穂も嫌いだが、それよりも俺は由衣が嫌いだった。
いや、嫌いになった…のだ、数日前から。
俺たちが通うのは、男しか居ない全寮制の男子校。
そんな閉鎖的な場所では時として男が男を襲い性処理を済まそうとする事件が起きる。
『由衣っ!!』
由衣の親衛隊だと名乗る少年から助けを求められ駆け付けた先では、シャツを破られ組み敷かれる弟の姿があった。
瞳に涙をいっぱい溜めた由衣を見た瞬間頭の中で何かが弾け、気付けば俺の手は血に塗れ床には由衣を組み敷いていた男が転がっていた。
『紫穂ちゃんっ、紫穂ちゃんっ』
『大丈夫。もう大丈夫だから安心しろ』
怖がる由衣の為に、その日は一晩由衣の部屋に泊まる事になった。だが、その夜。
『紫穂ちゃんお願い…またこんな事があったら嫌なの。だから、今のうちに紫穂ちゃんに奪って貰いたいの』
そう言った由衣に、俺は深い口付けを強要された。抵抗したかったが出来なかった。
俺は由衣に逆らえない。何故なら、由衣を蔑ろにすれば直ぐにその情報は両親へと届き酷い罰を受けるからだ。
別に、俺が特別両親に嫌われているだとかそういうことではない。
『抵抗なんかして良いの? 紫穂ちゃんにレイプされたって、父様と母様に言い付けちゃうよ?』
冗談でも何でもなく、そんな事を告げ口されたらきっと俺の人生は両親によって消されてしまう。その位、両親は由衣に対して盲目過ぎた。
生徒会の顧問である諒、生徒会の副会長である和穂に続き、由衣もまた生徒会役員であるから部屋は一人部屋。誰も邪魔に入る事はない。
俺は絶望と嫌悪と諦めの中、黙って弟のオモチャになった。
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