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1_出会い

ある日、突然、私の携帯電話にかかってきた見知らぬ番号。 仕事関係の人間かと思い、着信に出ると、前置きも疎かに飛び込んできた言葉。 「俺、あんたの奥さんと不倫してるんだけど」 夜七時を過ぎたファーストフードショップは制服を着た中高生や学生と思しき若者で賑っていた。 ブラインドが上げられた窓際のテーブル席で私は使い慣れないスマートフォンを手にしていた。 「その写真、家のパソコンにも落としてますから」 真正面でハンバーガーをぱくつきながらコーラを飲み、ポテトを摘む彼は松本と名乗った。 珍しく定時で仕事が終わり帰宅途中であった私を呼び出した彼は、私が店に到着するなり、自分のスマートフォンをろくな挨拶もなしに差し出してきたのだ。 画面いっぱいに広がる写真には紛れもない私の妻の姿が。 「それ削除しても状況変わらないっていうのは言っておきますね」 ベッドの上で裸の上半身を曝し、口を半開きにして目を瞑る彼女の隣には、写真を撮るために腕を伸ばしている松本の姿が。 「どこで知り合ったとか、いつからとか、面倒くさいんで説明は求めないでくださいね」 「何が目的なんだ」 「え?」 「お金がほしいのか?」 「あー金、お金はそりゃあ、あればあるだけいいですよねえ」 松本はどこにでもいそうな大学生の身なりをしていた。 ありきたりな色に髪を染めて、高くも安くもなさそうな服を着、むしゃむしゃとファーストフードを食べながら他人事みたいに「お金は大事ですよねえ」とほざく。 「例えば近所に写真をばら撒かれたくなかったら金出せ、みたいな?」 「……」 「あ、ポテト食べます?」 「……いらない」 「あ、そうですか。まぁ、旦那さんには何の非もないわけで、それで脅迫受けるとか、最悪ですよねえ」 「……いや、あるのかもしれない」 「え?」 「仕事が忙しくて妻に構ってやれなかった夫として……私がもっと家庭を顧みていれば、妻だってこんなことは……」 私の台詞の途中で松本は飲んでいたコーラを吹き出した。 近くにいた女子高生が笑っている。 憤慨した私は、つい、彼に声を荒げた。 「な、何だ、何がおかしい!」

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