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無事、誕生日を終えて平凡な日々が帰ってくる。友達が開いてくれたパーティーで騒いだり初めてちゃんと飲んだお酒とかの余韻が残りつつ、静かな時間のなか、俺はぼんやりとしていた。今日は学校のあとのバイトもなくて、友達と遊ぶこともない。家に帰って夕食を食べてからは、本当に一人で部屋でぼーっとしていた。
「はあ……」
一人になると、やっぱり考えてしまうのは智駿さんのこと。初めての、同性の恋人。会うたびに無意識にきゅんきゅんしていた人と結ばれて俺の心は幸せでいっぱいなわけだけど、ちょっとした悩みごとがある。
「……」
ベッドに横になって、スマホでネットサーフィンをする。みているのは……
「ううん……」
男性同士のセックスの方法。
男同士でのヤり方について、全く知識がなかったわけではないけれど、改めてちゃんとみてみるとやっぱり普通のセックスとはわけが違くて、尻込みしてしまう。使うところは、やっぱり、お尻なわけで……ここに挿れるのは抵抗がある人はあるだろう。っていうか元々ゲイでもなかった人は相手のチンコをみただけでも萎えるんじゃないかな。
悩みは、そう。智駿さんとエッチできるのか、ということについて。俺は智駿さんになら何をされてもいいって思っているから特に問題はないけれど、智駿さんはもしかしたらエッチしたいとは考えていないかもしれない。キスまでは女の人とするときと勝手は変わらないからできるけど、その先はちょっと、みたいな。智駿さんが時々見せる劣情が篭っているような色っぽい瞳を思えば智駿さんが完全な草食系というわけではないと思うけれど、あの時キスから先に進もうとはしなかったから、エッチには抵抗があるのかもしれない。じゃあラブホを見たときの発言はって、色々と考えるけれど、智駿さんの考えていることを俺が答えをだせるわけなんてなくて、結局延々と悩む羽目になる。
ああ、抱かれたい。
いつの間にか俺はそう考えるようになっていた。智駿さんに抱かれることを想像しては、体の奥が熱くなる。エロいことばっかり妄想して、俺もまだまだ若いというか、ある意味健全というか。付き合ったばかりなのにそんなことを考えて、もうちょっと落ち着けよって自分で思うけれど、どうしても妄想は止まらない。
俺、こんなに変態だったかな。
智駿さんに脚を掴まれて大きく開かされて、恥ずかしい格好をさせられて。そして奥のほうを突かれて、女の子みたいな声をだしてしまう……そんなことを考えて正直ものすごく興奮している。
自分でも知らなかったけれど俺はちょっとマゾの気があるようで、男らしさを奪われて女の子のように扱われることにドキドキしてしまうらしい。智駿さんを相手にするようになって初めて気が付いた。こんな変態染みた自分に罪悪感を覚えるけれど、期待してしまうのはしょうがない。そしてその期待が叶わないんじゃないかって悩んでしまうのも、しょうがない。
でも、くよくよばかりしていても、せっかくの恋が楽しめない。次の、智駿さんと会える日のことを考えてみる。
……エッチするかな。
「しないよな~……」
たぶん、なかなかキスより先には進まない。男女の交際だってそんなに早くヤったりしないのに、男同士なら、なおさら。でも、期待してしまうのが若気の至りというか。俺の脳内はもうすでに次のデートのときに智駿さんに抱かれるという妄想でいっぱいになっていた。
お尻でイクのは、チンコでいくのとは感覚が違うらしい。断続的に快楽が襲ってきて、何度イってもまたイってしまう。智駿さんに組み伏せられながらイキまくるとか、考えただけでゾクゾクしてきてたまらない。頭も真っ白になって、わけがわからなくなりながらただ喘ぐことしかできなくて……ああ、すごく、抱かれたい。智駿さんに女の子にされたい。自分がこんな性癖持っているなんて若干引いているけど、それでも俺は智駿さんに抱かれたい。
いや、でもまてよ。初めてのエッチでそんなに気持ちよくなれるわけがない。女の子ですら初めは痛いらしいのに、お尻を使う男ならなおさら。そもそも性器じゃない部分を使うのだから、簡単に最後までできるわけない。……もし、次のデートで智駿さんとエッチするとして。俺が痛がって大変なことになって、めんどうなセックスになったら智駿さんはそれから俺を抱こうとはしないんじゃないか。っていうかもしかしたら「やっぱり男とは付き合えない」とか思っちゃって、振られるかも……
やだ。それだけは、嫌だ。初めてのエッチで失敗したら、そうなるかもしれない。だから、俺が抱かれてちゃんと感じる身体じゃなきゃ……
――あとから考えればきっと「ちょっと落ち着けよ」って思うだろうけれど、初めての男の人とのお付き合いで不安だらけだった俺は若干思考能力がおかしなことになっていて、そのとき出した決断になんらツッコミどころを見出せなかった。
不安で不安でしょうがなかった俺は、「次の智駿さんとのデートの前にお尻で感じられるようにしておこう」とかいう、アホみたい結論を下していたのだ。
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