35 / 329
30
「梓乃~! お願いがあるんだけど!」
智駿さんと所謂お家デートをしてから日が経って。智駿さんに会いたくて会いたくて震えてしまうそんな金曜日。あと数日で智駿さんとデートできるけれど、ここまで我慢してきた辛さもそろそろ嵩んできて苦しい金曜日。今日は授業が五限まであってバイトもいれていなかったから、授業が終わってさっさと帰ろうとした俺に、瑠璃が話しかけてきた。
「デートしよ、デート!」
「……お断りします」
へへ、とわざとらしく笑ってそう言ってきた瑠璃に、俺は迷わずNOを出した。俺と瑠璃は所謂イツメンというやつで、お互いに恋愛感情を持つ時はこれからおそらくやってこない。だから「デート」なんて言葉を使ってきて笑いかけてきた瑠璃の本当の頼みには、嫌な予感を感じざるを得なかったのだ。
「お願い! 梓乃くらいしか頼めないんだって」
「……何を?」
「……彼氏の誕生日のケーキ選ぶの手伝って欲しいんだけど!」
ともだちにシェアしよう!