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 いつものように、智駿さんの家にお邪魔する。俺が作った簡単な夕食を食べながら、二人で適当にドラマをみていた。俺も智駿さんも、ドラマはそんなにみないタイプだけれど、テレビを付けたらやっていたからそのまま流しているという感じ。だから、流れているドラマのタイトルもよくわからないままに、なんとなくみていた。 「あれ、これ誰でしたっけ……俺の友達の女の子がすっごい好きなんですけど」 「うーん、僕、あんまり最近の芸能人わからないなあ。ゴールデンタイムはまだ家に帰っていないし」 「そっかー」  テレビにでているのは、最近若い女の子に絶大な人気を誇る俳優。主人公と思われる女の子にぐいぐいと彼が迫っていくストーリーは、女子中高生なんかに人気がありそうだ。そういえば駅にこのドラマのポスターが貼ってあったことを思い出せば、このドラマが少女漫画原作だと気付く。  ドラマはいかにも少女漫画らしいストーリー展開で、男が主人公にガツガツと迫っていた。かっこいい人にここまでグイグイと迫られたら女の子はすぐ堕ちちゃうだろうなあと思いつつ、もうひとつ思ったことがある。 「智駿さんってあんまりガツガツしてないですよね」 「んー?」  智駿さんに、こんなふうに強引にされたいってこと。 「そう? 僕梓乃くんに結構ガツガツしてたつもりだけど」 「もっと……もっときていいんですよ! 遠慮なく!」 「遠慮してないよ~」 「いや……そ、その、えっちのときとか……俺に優しくするばっかりで智駿さんが良くなってないじゃないですか」 「ああ、あはは、だって感じてる梓乃くん可愛いんだもん」  あんまり智駿さんは俺の言い分をわかっていないようで、のんびりとわかっている。たぶんこれは、そもそも智駿さんの性格がガツガツする感じじゃないからなんだろう。別に俺に遠慮しているとかではない、のかな? 「その……智駿さんは俺とエッチしてて気持ちいいです?」 「えー、すごくいいよ? どうしたの?」 「いや、あの……もっと俺が抱き心地よかったらがっついてくれるかなぁって……」 「十分気持ちいいよ、そんな心配しなくても」 「お、俺……! 練習、してるんです。智駿さんが俺とエッチしたときに気持ちよくなれるように」 「練習……?」  そう、彰人にろくでもないことを吹き込まれてから数日。俺はアソコの締まりが良くなるようにディルドを使って練習していた。結局「締める」感覚がよくわからなくて成果はでなかったけれど。 「……ギュってできたら、智駿さんが気持ち良くなって、もっとガツガツしてくれるかなって……」 それを言ってみれば、智駿さんはびっくりしたような顔をしていた。そりゃあ恋人がディルドでチンコを締め付ける練習をしていたらびっくりするだろう。でも、どんなに変態っぽいことでも俺は隠すつもりはないし、いっそ告白しようと言ってしまった。 「うーん、なるほどねえ」 「やっぱりそういうのって生まれ持ったものなんですかね……」 「……そんなに言うなら、その練習僕も付き合ってあげようか?」 「……へ?」 キョトンとした俺に、智駿さんが笑う。

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