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 智駿さんの家につくと、智駿さんが余り物のケーキといってチョコレートケーキを出してくれた。生チョコが使われたものすごくとろとろとしているケーキらしいけれど、まだ残暑が残る季節にこうした甘いケーキはそこまで売れないらしい。 「夏はねー、さっぱりとしたフルーツを使ったケーキが売れるんだよね」 「へえ、どんなフルーツのケーキが人気ですか?」 「僕のお店では日向夏を使ったケーキとかかなあ。季節のフルーツは美味しくて人気だよ」 「確かに暑いと柑橘系とか欲しくなるかも。でも、俺は智駿さんのケーキはなんでも好きですよ」 「あはは、すごく嬉しい」  お世辞でもなんでもなくて、俺は智駿さんのケーキならなんでも美味しいと感じる。たしかに暑いときにチョコレートケーキのイメージはないけれど、目の前にあるそれをみればすごく美味しそうって思えた。じーっと俺がケーキをみていれば、智駿さんは微笑んでフォークでケーキをすくって俺の口に運んでくれる。 「ん……」 「美味しい?」 「はい、あ……すっごい、とろける」 「食感が売りなんだよねー」  口の中にいれれば一気に甘いチョコレートが広がってゆく。ああ、すごく美味しいなあって頬を緩ませながら俺はケーキを食べていった。  小さいケーキだから、思ったよりもすぐになくなってしまって、ちょっと口さみしい。でも、ケーキってちょっと足りないくらいがちょうどいいサイズなのかなと思うと、この寂しさも美味しさの一つかなって思う。 「あ」  ふと、智駿さんが小さな声をあげた。なんだろうと思って智駿さんの視線をたどると、智駿さんの指にちょっぴりチョコレートがついている。フィルムの端についていたものだろう。  智駿さんはなんでもない顔をしてティッシュを一枚とろうとしていたけれど……俺はふとここで思い立つ。ここだ、ここで誘惑だ!って。  智駿さんの手をとって、その指先にくちづけた。そして、チョコレートをちろりと舐めとってみせる。 「……!」  ぴく、と智駿さんの指が震えた。よし、智駿さんのこと誘惑できているかなって、どんな表情をしているのかなって顔をあげようとしたときだ。ずぽって指を奥まで突っ込まれる。 「ふっ……!?」  そして、もう一本。智駿さんは二本の指を、俺の口に抜き差しし始めた。そんなことをされるとは思っていなかったから、俺は間抜けにぽやんとした顔をしてしまう。にゅるっ、にゅるっ、て舌を擦られて、唾液もいっぱいでてきて……だんだんとフェラをしているような気分になって、身体が熱くなってきた。  でも……俺は、智駿さんを誘惑したいんだ。ここで俺ばっかりエッチな気分になってちゃ、いけない。そういきり立った俺は前のめりになって、智駿さんの指を積極的にフェラし始めた。 「あっ……ん、……ふ、ぁ……」  この指は、魔法の指。ケーキみたいな繊細なものをつくりあげることもできるし、俺のことをどこまでも気持ちよくしてくれるし。大好きな智駿さんの指を、俺は必死にしゃぶる。しゃぶって智駿さんを興奮させたいのに……俺が気持ちよくなってきてしまう。触られてもいないアソコがじんじんとしてきて……視界がくらくらとしてきてしまう。 「あっ……」  このままだとチンコ勃っちゃうって思ったとき。ぬぷ……と指が引き抜かれた。もっとしゃぶっていたかったのに、って俺は寂しい声をあげてしまう。 「綺麗にしてくれてありがと」 「……ん、」  精一杯の誘惑だったし智駿さんもちょっと反応していてくれたかなって思ったけれど、俺から指を抜いた智駿さんの笑顔はカラッとしたものだった。  ……ちょっと誘惑が足りなかったかな。  悔しくてむーっとしてしまったけれど、俺はめげない。智駿さんの理性を壊して思いっきり犯されるまで、がんばって誘惑するんだ。  きっとこのあと軽く食休みをとったら、お風呂にはいるだろう。そこで誘惑がんばるぞって、俺は気合を入れ直す。

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