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 結局ファッションビルではいいプレゼントは見つからず、彰人とはさよならをした。やっぱりデパートとかで食器を買ったほうがいいかな、でもそれはなんか重いかなってうんうんと悩みながら俺は駅の改札に向かっていた。 「あれ、梓乃くん」 「……げっ」  不意に俺に声をかけてきた人物がいる。振り返って、俺は思わず顔をしかめてしまった。俺に声をかけてきたのは、白柳さんだったのだ。 「こんな半端な時間に何してるの?」 「……ちょっと買い物を」 「へー! でも何も買わなかったんだ?」  妙に白柳さんとは遭遇率が高いな、と思いつつ、俺はあることを思いつく。智駿さんと長い間友達をやっていたらしい白柳さんなら、智駿さんの好みとかを知っているんじゃないかと。 「……白柳さんって、智駿さんの好きなものとか知ってます?」 「お? 何、好きなものって」 「えーっと、いや……そろそろ付き合って丁度三ヶ月くらいなので、プレゼントとかあげようかなーって……」 「……プレゼント?」  尋ねてみれば、白柳さんはきょとんと目を見開いた。そして、なにやらにやにやとし始める。「へー、ほー、」とわざとらしく声をあげながらいつまでも笑っているものだから、俺はいらいらとしてきてじっと白柳さんを睨みつけた。そうすれば白柳さんは苦笑いをしはじめる。 「わっ、なんだよ睨まないでくれよ。智駿の好きなものだろ? あいつなんだって喜ぶよ。もう「俺がプレゼントです」とでも言えば?」 「またそれですか! 真面目に考えてくださいよ」 「またって何? 初めて言ったんだけど!? いいじゃん、自分に首輪でもつけて「俺を智駿さんのものにして、はーと」って言っときゃあの変態めっちゃ喜ぶって」 「く、首輪……」  白柳さんの言葉が、いなずまみたいに俺の脳天を貫いた。首輪……首輪いいな、なんて思い始めてしまう。  どうせ三ヶ月記念なんて男にとっては大事なイベントでもないし、マニアックなエッチがプレゼントってことでもいいような気がしてきた。ちゃんとしたプレゼントは一年記念とかでもいいかなあって。  そう思い立った俺は、白柳さんにお礼を言って彼に背を向けた。白柳さんが「えっ、冗談だったんだけど!?」みたいなことを言っていたけれど、俺は構わず首輪を探しに再び街に向かっていった。

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