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Speculoos~スパイスをきかせて~

「ほう、三ヶ月」 「うん、三ヶ月」  俺と彰人はファッションビルのメンズのフロアを歩きながら、いつもの調子でだらだらと会話をしていた。ネクタイを見てみたりハンカチを見ていたりしている俺を見て、彰人がにやにやと笑っている。 「付き合って三ヶ月って何かするもん? 梓乃ちゃんって思考が女の子寄り?」 「えっ、なんで?」 「いや~、せめて記念日なんて一年刻みっしょ。三ヶ月は細かい細かい」 「そうかなあ」 「いや、でも嬉しいと思うよ。梓乃ちゃんに三ヶ月ですねって言われてプレゼントまでもらったら」 ――そう、俺と智駿さんはもうすぐ付き合って三ヶ月。彰人がいうように記念日なんて頻繁にお祝いしなくてもいいんだけど、なんだか無性に三ヶ月の響きが特別に思えた俺は、智駿さんにちょっとしたプレゼントをあげようと思ってこうして買い物に来ていた。  でも、こうしたプレゼントって何をあげたらいいのかわからない。智駿さんが同年代なら俺の好みとそこまでかけ離れていないと思うから選びやすいけれど、智駿さんは年上だし社会人だしで俺とは全然好みが違うような気がする。 「うーん……パティシエだし食器とかがいいかなー」 「もう「俺がプレゼントです」でよくね?」 「……きもい」 「えー! いいじゃーん! 俺も梓乃ちゃんが欲しいー!」  何が「俺がプレゼントです」だよ、って俺は舌打ちをしそうになった。そんなのは可愛い女の子が言ってギリギリ成り立つものだ。  俺はぎゅっと抱きついてきた彰人を振りほどいて、とりあえずここにはプレゼントにできそうなものはないなってエスカレーターへ向かっていった。

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