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家に帰ると、まずは二人でお風呂にはいった。そしてさっぱりしたところで ベッドの上でだらだらと眠気がやってくるまで過ごす。もうすでに夜遅いこともあって、そうやってゆったりと夜の時間を過ごしていた。
「……あれ、これは……」
BGMとして流していたテレビが視界にはいって、俺はついつい反応してしまう。テレビは映画なんかを流すチャンネルに合わせられていた。そしてこの時間だからだろうか、流れた映画はかなりエッチそうな映画だったのだ。これはなんか気まずくなりそうだと思ったけれど、ここでチャンネルを変えるのも逆に気まずい。しかも俺が無駄に反応してしまったから、智駿さんの意識もそのエッチな映画に向いてしまった。
「うひゃー、なんかすごいですね」
もう、開き直って俺は映画についてコメントしてみる。実際のところその映画はなかなかにエロかった。いかにも、なセクシーな女優さんの、AVとは違った妙に艶かしいセックスが初っ端から流れる。俺は別にそういうのをみて照れるようなタイプでもないし普通にみていられたけれど、智駿さんがそばにいるとどうしたらいいのかわからなくて戸惑った。
とりあえずしばらくみていると、映画はだんだんと過激になっていく。興奮するもいうよりも「す、すげー……」って気持ちでみていると……映画はSMのシーンに入っていった。女優さんが縛り上げられて、ムチで叩かれている。「こんなことされながら濡れているぞこの淫乱」とかテンプレ的なセリフに笑いそうになりながらも……智駿さんの反応が気になった。智駿さんはSMにどんな反応を……
「いやあ、痛そうだなあ。これを恋人同士ではやれないねえ」
「で、ですよねー!」
……思った通りの反応すぎて俺は脱力してしまう。智駿さんはドエスだけど、あくまで甘々なエッチが好きなんだ。俺の嫌がることは絶対にしない。だから、こういった痛そうなプレイをしたいと思っていないと思う。
「あっ、そういえば今日梓乃くんと一緒にいた彰人くん?」
「えっ?」
残念だな……としょぼんとしていれば、智駿さんが不意に彰人の話をふってきた。
――あれ、これはもしや……お仕置きフラグ?
ピン、ときて、俺はワクワクすると同時に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。彰人とは完全に友達だけれど、あんなにベタベタしたら智駿さんはモヤッとすると思う。これでお仕置きとしてすごいことをしてくれるのは嬉しいけれど、やっぱりあれは俺も反省しているし素直に喜べないかなあと複雑な気持ちでいっぱいだった。
……が、
「あの子、そういえばうちの店に来たことあるんだ。なんかみたことあるなーって思ったんだよね。あ、ごめんね全然関係ない話で」
「……」
――彰人の話は俺の考えていたこととは一ミリもかすりのしない、俺の反省とも期待とも全く関係のない話だった。
なんでだよ、お仕置きしてくれよ!って俺はわけのわからない叫びを心の中で発する。たしかにあれはベタベタはしていた、けれど彰人の様子は完全に酔っ払いだった。どうやら智駿さんは酔っ払いが俺にベタベタしようと一々怒ったりするタイプじゃないらしい。まあ冷静に考えてみれば飲み会のたびにキレる恋人とかウザいな……と、俺はSMをしてみたいがために自分の考えがちょっと飛躍していたことに気付く。
「あれ、どうしたの梓乃くん」
「……いえ! なんでもないです! 今のままの智駿さんが大好きです!」
「えっ? あ、ありがとう?」
まあ、落ち着け俺。SMなんてアブノーマル中のアブノーマルなんだ。AVとかではありがちだけれど現実でそんなことやっている人、本当に一握りなんだ。
残念ではある、でもやらないのが当たり前だと思うことにした。こういうのはお互いが完全に乗り気じゃないと楽しくないんだから、無理にやってもらうのもよくない。
――今の、甘々なエッチも俺は大好きだ。最近智駿さんがちょっとがっついてくるようになってきて、気持ちよさもガンガン増してきている。俺は、十分に幸せだ。
ちょっとだけSMしたい欲求が落ち着いてきて、今の自分の幸せを再確認する。とりあえず……もう準備しちゃっている首輪プレイだけ、智駿さんにおねだりしてみよう。ほんの少しの物足りなさを感じながらも、俺はあんまりアブノーマルなことはできないのだと納得し始めていた。
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