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 ついに、智駿さんと付き合ってから三ヶ月の日がやってきた。白柳さんにはエッチなプレイがプレゼントってことで、みたいなことを言われていたけれど、この際プレゼントとかそういうことはなしにして普通にSMを誘ってみようと思っている。だって、俺の頭の中には三ヶ月記念とかそういうことはあるけれど、たぶん智駿さんの頭にそんなことは入っていないと思う。付き合い始めた日は覚えていても、わざわざ三ヶ月を祝おうなんて思っていないだろう。そんなわけで、三ヶ月目ですね、なんてことも今日は言わないつもりでいた。  いつものように智駿さんの家におじゃまするけれど……自分でも自覚するくらいに、俺の言動はぎこちない。手に下げた紙袋の中には、首輪と鞭、それから手錠。たぶん普通の人がみたらドン引きするフルセットだ。――でも智駿さんならきっと引いたりしない。だって智駿さんは俺のこと好きだし、 「ち、智駿さん!」 「えっ、なに?」 「俺と、SMプレイしてください!」 ――智駿さんだって十分に変態だからだ。  かなりエッチなセックスをするし、その頻度も高い。そしてドエムな俺をいじめまくって焦らすのが大好き。そんな智駿さんは立派な変態だ。ここで断ったりされたら困る。というか俺をドエムにした責任をとってほしい。  俺は威勢よく土下座をして、紙袋を智駿さんに手渡した。とんでもない言葉と共にSMグッズの入った袋を押し付けられた智駿さんはさすがにびっくりしてしまったようで、わたわたとしている。 「えっ、鞭まで入ってる! だめだよ梓乃くん、痛いのはだめ」 「大丈夫です、それそんなに痛くない鞭です!」 「そ、そうなの?」 「叩いてください、いじめてください、お願いします智駿さん!」 「ひええ、どうしたの梓乃くん」  もはや半分やけだった。こんな変態プレイはこのくらいの勢いで迫らないと恥ずかしくて頼めたものではない。羞恥心を堪えてしっかりと智駿さんを見据えて、俺はじっと智駿さんの答えを待つ。 「えっとー……梓乃くんってこういうの好きなの?」 「えっ、ひいてます!?」 「ああ、違う違う、知らなかったなあって思って」  智駿は土下座する俺の前に座って、困ったように笑う。智駿さんはドエスではあるけれど、こういうことをやりたいなんて思ったことはないだろう。困るのは当たり前のことだ。  でも、智駿さんは嫌な顔はしていなかった。ふうん、と声をあげながら袋に入った道具を眺めている。首輪を取り出して俺の首にあててはふふっと笑って少し楽しそうだ。 「似合うかもね」 「……あの、むりなら大丈夫ですよ?」 「ううん、むりじゃない。やろっか。でもあんまり梓乃くんを罵る言葉は言えないかも。SMって「このめすぶた!」とか言うんでしょ?」 「い、言わなくていいです、いつも通りで」  あんまり、引いていないみたい。でもやっぱりSMをわからない智駿さんは、これからやることに不安を覚えているようにみえる。大丈夫かな、智駿さん辛くないかな。その辺が心配だけど、智駿さんはSMをすること自体は嫌がっていないみたいだから安心した。 「うん、じゃあ、やろ。梓乃くん。よろしくね」

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