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「ん……」  目をさますと、もう太陽が登っていた。また意識を飛ばしちゃったのか……と俺はため息をつきながら体を起こす。  陽の光が差し込む部屋は、やわらかな雰囲気が漂っている。セックスをした翌日の、この雰囲気が俺は好きだ。聞こえてくるケトルの音が心地よい。キッチンの方に智駿さんがいるみたいだ。 「あれ……」  俺は首に違和感を覚えて、触れてみる。何かが首に付けられている。パッと体を見下ろしてみても手錠もついていないし、昨日の首輪についていたごつい鎖が垂れているわけでもない。何が首についているのだろうとぐっと視線を落としてみれば……ネックレスのようなものがついていた。 「あ、おはよう梓乃くん」 「おはようございます……智駿さん」  俺が知らないうちに自分の首についていたネックレスに疑問を覚えていると、智駿さんが二つのマグカップを持って登場する。そして穏やかな笑みを浮かべながらテーブルの前に腰を下ろして、じっと俺を見つめてきた。 「似合うね、梓乃くん」 「あのっ……このネックレス……」 「プレゼントだよ、僕から」 「プレゼント?」 「んー、実は昨日、僕と梓乃くんが付き合って三ヶ月の日だったんだよね。ちょっとしたお祝い、みたいな?」 「えっ」  智駿さんが言ってきたのは、俺の聞き覚えのある言葉。付き合って三ヶ月。三ヶ月記念日。  智駿さんは――三ヶ月記念を気に留めていなかったどころか、俺が「三ヶ月記念日は俺がプレゼントです」なんてバカなことを考えているあいだに、こんなに綺麗なプレゼントを準備していたらしい。  俺はかあーっと顔が熱くなるのを覚えた。俺ばっかりエッチなことを考えて、智駿さんはやっぱり大人だ。恥ずかしくなって俺がうつむけば、智駿さんがついっと近づいてくる。そして、俺の首についたネックレスに指を添えて、言った。 「……昨日の首輪の梓乃くんも良かったけれど、こっちのネックレスをつけた梓乃くんも、いいね」 「へっ」 「……これ、首輪代わり」 「……!」  ……首輪代わり。  このネックレスは、俺が智駿さんのものって証らしい。綺麗なプレゼントをくれたのかと思いきや……とんでもない独占欲に閉じ込められてしまった。 「……っ、智駿さん、ありがとうございます!」  俺は嬉しくて嬉しくて、にやけてしまった。これでいつでも、智駿さんの首輪がつけていられる、って。  俺はもう、智駿さんのものなんだって。

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