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学校が終わって、俺と彰人は駅前をぶらぶらとすることにした。今日は俺も彰人もバイトがなくて、とくにやることはないけれど適当に遊ぼう、という話になった。
「……セラっていつ帰るの?」
「一緒にいちゃダメ?」
「いやだめってわけじゃなくて、純粋に疑問に思ったっていうか」
「んー、とりあえず今日帰るかなー」
セラも、俺たちについてきていた。彰人は学校で一緒にいるうちにセラに慣れたらしく嫌な顔はしていなかった。
「っていうかセラくんはなんで梓乃ちゃんについてるの?」
「えー、一目惚れ! だから エッチしたくて」
「梓乃ちゃんは絶対靡かないと思うな~。梓乃ちゃん、彼氏さんのこと好きすぎだし」
彰人はセラに話しかけながら、やんわりと俺から彼を遠ざけようとしてくれた。セラはわかっているのかいないのか、「ふーん」となんて言っている。
この子悪い奴じゃないけれど色々不安だな、なんて俺がため息をついたときだ。彰人が「あ」と声をあげる。
「梓乃ちゃん、あれ、梓乃ちゃんの彼氏さんだよね?」
「えっ!?」
なんでこんな時間に駅前に!?とびっくりしながらも彰人の視線を追えば、駅中のカフェの窓際に、たしかに智駿さんが座っていた。智駿さんの前にはスーツ姿の女性が座っていて……彼女の持っている紙袋からすると、彼女はウェディングプランナーとかだろうか。仕事の打ち合わせかな、と思ったけれど、そんなことよりも俺の横でそわそわとしだしたセラが気になって仕方ない。
「し、梓乃くん……あれが梓乃くんの彼氏?」
「え……まあ、うん」
「……か、かっこいい……抱かれたい」
「……」
やっぱり。俺は予想通りすぎるセラの言葉にがっくりと脱力してしまった。セラはもはや若目の男なら誰でもかっこよくみえるのではないだろうか。たしかに智駿さんも彰人も見た目がいいからかっこいいなんて言うのはわかるけれど、そんなにほいほいと言われたらセラが本当にビッチに見えて仕方がない。
「梓乃くん……俺を交えて3Pとか……どう?」
「どうじゃない! 断固拒否!」
「そんな……じゃあ彰人くん……俺と今夜ホテルに」
「彰人を穢すな!」
セラのビッチ発言に俺が騒いでいると、カフェの中にいた智駿さんが席を立つ。女性に対してお辞儀をしていたりして、やっぱり仕事の何かだな、とぼんやりと眺めていれば、智駿さんがカフェから出てきた。
智駿さんはすぐに俺に気付いて手を振ってくれたけれど、たぶん俺の表情はガチガチだ。すぐ隣でセラが「わあ物腰柔らかなイケメン……エッチ上手そう……」なんて言っているから、それが聞こえたらどうしようとヒヤヒヤしていたのだ。
「偶然だね、梓乃くん。それから……彰人くんと、」
「あ、セラです、この子」
智駿さんが声をかけてくると、セラが口を開く前にセラの口を手で塞いで俺が返事をしてやった。絶対こいつ、口を開けば智駿さんに変なことを言うと思ってのことだ。セラはといえば、俺がセラの頭を抱えるようにして口を塞いでいて密着状態となっているからか、やけににこにことしている。
でも、そんな俺の作戦は失敗。口を塞がれながらにこにこしてるってコイツやばい奴だ……と俺が軽く動揺したからか、俺の隙をついてセラが俺から逃げ出してしまう。
「あの、梓乃くんの彼氏って本当ですか!」
「?」
「ちょっと俺のことも抱いてみません!? 梓乃くんの前で堂々とオッケーすれば大丈夫でしょう!」
「??」
馬鹿野郎なにを言ってんだこいつ、って俺がぽかんとセラの頭を殴っているのを、智駿さんはわけがわからないといったふうに見つめている。もはや言語を理解できないとでも言いたげに、きょとんとしていた。
「あの! 今夜空いていませんか!? ホテルいきましょう!?」
「あはは、梓乃くんの友達って面白い人多いね」
もはや智駿さんはこの宇宙人を相手にしていない。そのくらいあっさり交わしてくれるなら安心できるけれど……なんだかセラの様子に俺は危ない気配を感じていた。俺や彰人を見る時よりも、なんだか本気の目をしている。
バカゆえに天然っぽそうだから、何をしでかすかわからない。
その場は、智駿さんがすぐに店に戻らなくてはいけなかったからすぐに引き離すことはできたけれど……これからも油断しちゃいけないのかもしれない。
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