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「……なんで着いてくる!?」 「暇なんだもーん」  今朝は嬉しいことに何もなかった。最悪、目が覚めたら同じ布団に寝ていて俺の服が脱がされている、くらいは想像していたから、無事何事も起こることがなく爽やかな朝を迎えられて安心していた。  ……けれど、今日1日俺はひどく苦労することになりそうだ。なんと大学にセラが着いてきた。 「わー、すごい。俺、大学なんてきたことがないからすっごい楽しい」 「……そう」  セラは見た目は抜群にいいから、一緒に歩いているとやたらと目立った。とくに女の子から大量の視線をぶつけられて、あんまりそういったものになれていない俺は眩暈を覚えてしまう。 「授業ってなにすんの?」 「えー……大体は講義聞いてるだけだよ。高校とそんなに変わんないって、教室デカイけど」 「へー! 楽しみ!」 「授業にまで潜りこむつもり!?」  誰でも気軽に入ってこれちゃうのが大学の危ないところだなあ、なんて考えながら、俺はなんだかんだでセラを教室まで連れてきてしまった。  教室にはいっても、セラは注目を浴びていた。大講義室で大人数でうける授業といっても、二年生ともなれば同じ学科の人の顔は覚えるもので。全くみたことのない、超美青年が俺の横に着いてまわっているとなると、好奇の眼差しを受けることになる。  めんどうなことになったなあ、そうぼんやりと思いながら席に着いた。当たり前のように俺の隣に座ってきたセラは、俺の出した教科書なんかを興味深々といった様子で眺めている。 「あれ、梓乃ちゃーん! おはよう! 」 「彰人……おはよ」  そうして授業開始を待っていると、彰人がやってきた。俺の横に座っているセラをみて、「おはようございます」とにこやかに笑って挨拶をすると、少し俺から離れた席に座ろうとする。セラが俺の友達だと思ったのか気を使っているのかもしれないけれど……今は彰人に離れられると困る。 「ちょっ、彰人、こっち!」 「えっ、うん、おお……よろしくお願いします~」  彰人はキラキラとした見た目のセラに怖気付いているのかたじたじになりながらも、セラとは反対側の俺の隣に座った。  セラは教科書から彰人に興味が移ったのか、じっと彰人のことをみている。そんなにガン見してやるな……と思いながら俺が黙っていると、こそっとセラが耳打ちをしてきた。 「……その人が梓乃くんの彼氏?」 「違うから!」 「そうなの?」  なにを言い出すんだと俺が小突くと、セラがへらへらと笑う。「梓乃くんの彼氏気になるな~」なんてぼやいているセラを、彰人はびっくりしたような顔で見ていた。俺が男と付き合っていることをこいつが知っているのか、って思っているのだろう。  セラはそんな彰人の顔にも動じることはない。笑顔を絶やさず、俺の前に乗り出してきて、彰人に話しかけ始めた。 「えーと、彰人くん?」 「えっ、あ、はい」 「……君もかっこいいねー! 俺とエッチしない?」 「……梓乃、こいつ何?」  セラが彰人へ言った言葉に、思わず俺は頭を抱える。彰人が珍しくドン引きしていたから、俺はぺんっとセラの頭を叩いてやった。  セラは、進学することもなくこの歳で体を売る仕事をしているということで、何かしら事情があるのかと思っていた。けれど、そんな俺の憶測はハズレだったらしい。セラは、ただのバカでビッチだ。計算して行動しているなんてこともなく、単純にエッチが好きなバカな子。 「俺のまわりから相手を探すのはやめなさい!」 「えー、だめ?」 「ダメ」 「……うーん、残念」  とりあえずしっかり注意をしておく。男に求められることに慣れすぎて、セラの感覚はきっとズレている。俺の注意は一応聞き入れてくれたみたいだったけれど、納得はしていないようだった。

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