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「……」 「梓乃くん? どうしたの? 具合悪い?」 「いや……」  来たるこの日。由弦の絵のモデルをやる日だ。  ただ、体調が万全かといえば、答えはノー。なんとこの日まで、俺は智駿さんに挿入をしてもらっていない。二週間ほど、俺は智駿さんに挿れてもらっていないのだ。まだ二週間、完全にエッチをしていなかったなら違っていたかもしれない。でも智駿さんは、俺にエッチなことはしてきていた。キスとか乳首責めで毎回イかされて、特に意地悪なときは素股をやってくる。太ももにちんこを擦り付けるなら挿れてくれてもいいじゃん!って思うけれど、智駿さんはドエスだから俺をギリギリまで追い詰めてくる。つまるところ、エッチな気分にはなっているのに最後までやっていないから、俺はもう超欲求不満状態なのだ。 「ぬ、……脱ぐんだよね」 「ああ、うん、お願い!」 「……」  別に俺は女でもないし、裸を人に見られることには抵抗ない。でも、超欲求不満な今の俺の身体は、とにかく敏感だ。空気に触れただけでも、エッチな気分が膨らんでしまう。すでに服のなかでは乳首が勃ってるし……今のこのいやらしい身体をみられるのは、ましてやガン見されるのは、恥ずかしい。  でも、そんなことを言っていたら由弦に迷惑がかかってしまう。俺は何食わぬ顔で、服を脱いでいった。 「……、」 「えっと……あ、あんまり脱いでるところ見ないで」 「ああ、いや、ごめん!」  ボタンを一つ外すだけでも、ゾクゾクする。ボタンを外そうとすれば、シャツがびんびんに勃った乳首を擦って声が出そうになる。っていうか、こんなに勃った乳首みられて大丈夫なのかな。由弦と俺の距離なら、俺の乳首が勃っているかいないかなんてわからないかもしれないけれど、この、智駿さんにいじめられまくった性感帯をさらけだすことに、俺は凄まじいほどの羞恥心を感じていた。 「……すごい」 「はっ!?」  シャツを脱ぎ終えると、由弦がぼそりと呟く。そして視線を縫い付けたように俺の身体をジッと見て、黙りこくる。ごくりと唾を呑んで、瞳孔まで開いちゃって、ちょっと怖いなと感じながらも俺はあまりの圧迫感に動けない。 「こんなすごいモデル、はじめてみた……何回か人をモデルに絵を描いたことはあるけれど、こんなに描きたいって思うようなモデルははじめて」 「い、いや……俺とか大層なモデルじゃないでしょ……顔も体も並だし……」 「違う、内から溢れ出す……なんていうか、熱がすごい。ほんと、すごい。ものすごく官能的」 「かっ、官能的!? まっ、べつに俺エロいこととか考えてないし最近エッチちゃんとしてな」 「きっと誰が見ても描きたいって思うよ、梓乃くんのことは。ものすごい魅力を感じる……いや、もっと魅力を引き出したい」 「え、あ、あの……!?」  芸術家の考えてることはわからない。いやほんとちょっと怖いぞ、なんて俺が顔を引きつらせると、由弦が立ち上がってこっちにやってきた。  そして、どこからか縄を持ってくる。本当になんでそんなものがあるんだってツッコミを覚える前に、由弦は俺の前に立っていた。

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