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「僕、そんなに梓乃くんの性癖とか知らないけれど、梓乃くんってものすごくドエムでしょ」
「えっ、えっと、」
「僕の感性がそう言ってる、梓乃くんちょっと縛られてみようか。たぶんすごく魅力的になれるよ」
「ま、待ってー!」
芸術家、怖い。俺の性癖まで、その目で見抜いてしまうらしい。
由弦はそれはもう真面目な顔で俺の体に縄を巻きつけていって、手を後ろ手に拘束し胸を強調するような縛り方をしてきた。強く締め付けられているというわけではないから、苦しさは感じないけれど……これはかなりいやらしい縛り方で、落ち着かない。
「すごい、官能的だ、梓乃くん……すごい」
「ば、ばか……似合わない、から」
「そのまま、恋人に抱かれるところを想像して。そうだな……こうして縛られたまま、激しいお仕置きをうけるところでも」
「……ッ」
由弦の言葉のままに、俺はうっかり智駿さんにいじめられる妄想をしてしまう。こうして縛られたまま、アソコを靴を履いた足でぐりぐりされて、「変態」って罵られながら鞭で思いっきりぶたれるとか……もう、すごくゾクゾクする。
由弦はそんな俺を放っておいて、再びキャンバスの前に戻った。そして、じっと俺のことをみつめて、俺のことを観察し始める。
「……ッ」
しゃ、と鉛筆の芯がキャンバスを引っ掻く音が響いた。ほんとうに、この俺を見ながら絵を描き始めたようだ。俺の、このいやらしい身体を、そのままキャンバスに写している。意識し始めると、よけいにいやらしい気分になってきて、腰が勝手にもじもじと動く。
「はぁ……は、……」
ぴく、ぴく、と小さく痙攣する身体。想像のなかで俺は智駿さんに犯されまくっていて、激しい調教もされている。この、ピンッと勃った乳首にマックスに強くしたローターをあてられて、乳首イキさせられて。調教されながらイッた悪い子の俺は、お仕置きに何度もなんどもイかされる。泣いてゆるしてって言っても、お尻の穴が壊れちゃうくらいに犯されて、声が枯れるまで俺は喘ぐ。
妄想は、どんどん変態臭く激しくなっていった。その間も、由弦の手は止まらない。妄想のなかでいっぱいイッている俺を、由弦は真剣に描いていた。
「ゆ、づる……」
「……」
頭のなかだけでイクと、身体が本物の絶頂を求めて、よけいに疼いてしまう。もちろん、だからといってそれを解消するような行為をするわけにもいかない。俺ができるのは、ただ、耐えるだけ。
鉛筆の音が、身体を撫でているようで、ひたすらに辛かった。熱はどんどん膨らんでいって、くらくらとしてくる。眉一つ動かさず表情を変えない由弦がじっと俺を見つめて、着々と作品を完成に向かわせているのを、俺はぼんやりと眺めていた。
「ああ、できた――」
どのくらいの時間、俺は耐えていたのだろう。モデルになる人は動いてはいけないから大変とは聞いていたけれど、俺は別の意味で大変だった。熱だけがどんどん膨らんでいくのに、それを発散することもできず、ただただ自分の中で昇華することしかできないのだから。
ようやく完成したらしい由弦は満足気にキャンバスを眺めている。いいものが描けたのだろうか。
「……ッ!?」
恐る恐るキャンバスを覗いて、俺はギョッとしてしまった。それはもう、そこいらの成人向け雑誌の表紙なんかよりもエロい俺が描いてあったからだ。写実的は写実的、なのに、妙に……いやものすごく艶かしい。一体どんな解釈をいれて描いたらこんな風になるんだと、びっくりしてしまった。
「いやあ……すごかった……こんなに興奮しながら描いたのは初めてだ……」
「いや、これ、ほんとに俺!?」
「もちろんだよ。梓乃くんからでてくる凄まじい色気が僕の手を勝手に動かすんだ……すごかった……本当にすごかった……」
恍惚とした顔で、由弦は俺を描いた感想をぼやいている。たしかに俺は描かれている途中、エロいことを妄想していたけれど……そのときの俺は、由弦の目にこんな風に映っていたのだろうか。そう考えると、とんでもないことをしてしまったような気がする。
「また、描かせてよ! こんなに絵を描くことが楽しいって思えるなんて、なかなかないんだ!」
「の、ノー! だめ、やってはいけない気がする!」
「なぜ!」
「智駿さんに怒られるー!」
……今日のことは、智駿さんには黙っておこう。直感的に、そう思った。
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