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「ええー? 梓乃くん帰るの?」
「いや、だってずっとここにいるのも悪いし……」
「まだ3Pしてないよ!?」
「永遠にしないから大丈夫」
しばらく白柳さんの家で休ませてもらって、俺はお暇することにした。俺が帰ろうとすれば、白柳さんはシッシッと手を振りながら「じゃーね」と言ってきたけれど、セラは慌てたように俺に抱きついてくる。俺はそんなセラを引きはがしながら、ごろんと横になっている白柳さんに声をかけた。
「白柳さん、ありがとうございました」
「おー。梓乃くん、そこのビッチうざいだろうからここに置いてっていいよ」
「えっ、セラのこと置いてっていいんですか?」
「おー」
セラは白柳さんの言葉を聞くなり、嬉しそうに笑って、今度は寝転がっている白柳さんに向かって突撃していった。セラにのしかかられるなり「ぐえっ」と呻いた白柳さん、あんまり嫌そうな顔をしていない。
ちゅーをしようとしているセラの顔面を鷲掴みしながら、白柳さんはこっちを見る。白柳さんはふう、とため息をついたかと思うとふっと笑って、俺に言う。
「未来なんて何もしなくてもやってくるぞ。焦るだけ無駄だ。おまえはおまえの周りに目を向けて、自分が本当に望むものはなにかって、それを自分で知っていればいいんだよ」
「……、」
「こんな草臥れた町医者になるか、それとも……そうだなあ、おまえの親とか。いろんな大人が周りにいるだろう。そいつらを見てみれば」
「親……」
白柳さんはそれだけを言って、俺に背を向けてしまった。セラが「白柳さんんん」とばたばたともがいてるのを見ながら、俺はぼんやりと考え込んでしまう。
そっか、親か。俺もいずれ、あのくらいの歳になるんだもんな。
なんだか、ちょっと自分の未来像が変わりそうだ。大人はバリバリ働いて、お金を稼がなくちゃいけない……というイメージから、なにか別のものに。
「し、白柳さん……ありがとうございます!」
ちょっと、白柳さんの言葉が心に染み込んできた。ああ、なんだか、焦りが少しだけとれたような気がする。
俺は、白柳さんにもう一度お礼を言うと、その場を後にした。
あと、なんだかんだいい関係なような気がするセラと白柳さんがほほえましく思えた。
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