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Mille feuille〜たくさんのものが、重なり合って〜
「えっ、やだやだ! 反対!」
珍しく駄々をこねる紗千。半分涙目になりながら、俺に抗議の眼差しを向けてくる。すごく可愛いけれど、……けれど、こればかりは決めたこと。俺は心を鬼にして、紗千の猛反対を跳ねのける。
「一年間だけだから」
「やーだー! なんでそんなこと急に言うの!」
「前から言ってたよ」
「私聞いてないもん!」
「でも、このままだと俺、来年度からキツイって……」
「家を出ていくなんて、イヤ!」
――俺は、三年生から一人暮らしを考えていた。
というのも、三年生から、大学のキャンパスが変わる。今住んでいる実家からは、通学時間がかなりかかってしまうところにあるため、引っ越すことを考えていたのだ。
授業が少なくなって、就活が始まったらまた実家に戻ってこようと考えている。けれど……紗千はそれでも寂しいらしく、こうして駄々をこねているのだった。兄の俺としては可愛いなと思うけれど、でも、今回ばかりは紗千のわがままを受け入れるわけにはいかない。通学時間が増えるということは俺の睡眠時間が減るということだ。それは、無理。
「ごめん紗千! もう、今日アパート決めにいくって決めてるから!」
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