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「ハァ~、妹ちゃん可愛いな~。お兄ちゃん出て行かないでって駄々こねられたら俺、シスコンになっちゃうよ」 「そうだね~、紗千は可愛い」 「俺にくれない? 俺と紗千ちゃん結婚したら、俺と梓乃ちゃん家族になれるよ」 「あはは、しばくぞ」  大学の友達も、引っ越す人は結構多いようだ。キャンパス移動の時期は、みんな慌ただしい。彰人も例に漏れず引っ越すらしく、初めての引越しになる俺の相談に乗ってくれていた。  そう、俺にとって引越しも一人暮らしも初めてだ。わからないことだらけで、不安がいっぱいある。生活の仕方だってよくわかっていないし、アパートの選び方だってわからない。 「梓乃ちゃん、智駿さんのところに住めばいいのに。実家よりは大学に近いっしょ?」 「いやぁ……さすがに同棲はね」 「そう? いるじゃん、大学生で同棲してる人。愛美だって彼氏と同棲してない?」 「親になんて説明するの」 「うーん、確かに!」  智駿さんのところに住みたいなぁとは確かに考えた。が、俺も智駿さんもその提案はしなかった。暗黙の了解ようなものだ。親とかに紹介して、本格的に将来を考えるのはまだ早い、という。どのタイミングで親に言おうかなっていうのは、まあ……追い追い考えるとして。  とりあえず俺は、この一年は一人暮らしをする。アパート選びで生活がガラッと変わるのは友達を見ていてよく学んでいるので、今日のアパート選びは慎重にいきたい。 「アパート選びのコツは?」 「ううん、やっぱりキャンパスへの近さ? あと~う~ん、なんかあるかな。学生が住むようなアパートなんてみんな同じようなもんじゃないかなあ」 「まあ……たしかに」 「アッ! 梓乃ちゃん、これ大事だよ! 防音!」 「ああ、そうだね、防音は大事」 「梓乃ちゃん声大きいでしょ?」 「声?」 「こ、え」 「……」 「……」 「……って、なっ、何、」 「なに?  俺、まだ何も言ってないよ」 恥ずかしいことを言われて、ついカッとなってしまう。けれど、たしかに大事だ。隣人を気にして智駿さんとエッチできないのは嫌だ。 ……っていうか、これからは俺の部屋に智駿さん呼べるのか。 「梓乃ちゃん? 何にやけてんの?」 「へっ? い、いや」 一人暮らし、何もかもが変わるんだ。 不安ばかりだったけど、少しだけ、楽しみかもしれない。

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