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「ふうん、いいアパートだね」 「家賃もそんなに高くないですよ!」  なんやかんやと、アパートは無事に決まった。相変わらず紗千は納得してくれないけれど、これである程度引越しの準備は整ったわけだ。俺はやたらと心配していた智駿さんに、その旨を報告していた。  智駿さんは、俺のスマートフォンに映るアパートの写真を見ながらうんうんと頷いている。智駿さんから見ても、俺の選んだアパートは悪くないみたいだ。 「コンビニが近いんです」 「……コンビニでご飯買うようになりそうだね」 「築十年も経っていないですよ!」 「それはいいね」 「収納スペースが多い!」 「結構それ大事」 「そしてそして……防音です!」 「……防音?」  なにが一人暮らしにとって大切なのかよくわかっていない俺は、不動産会社の人に言われる利点をひたすらに鵜呑みにするしかなかった。しかし、その中で防音というところは、俺にとってすごく大きな部分だ。防音なら……智駿さんと何をしても大丈夫。智駿さんと夜を過ごしたその次の日に、お隣さんに気まずそうな目で見られるなんてこともない。  が、智駿さんは防音と言われてもピンときていないようだ。「防音っていいよねえ」と普通な反応を返してくる。いや……それでいいんだけど。 「……そういえば智駿さん、智駿さんのこの部屋って……防音ですか?」 「さあ? ある程度は防音なんじゃない? お隣さんの声とかが聞こえてきたこともないし」 「……よかったあ……」 「なんで?」 「い、いやあ……ほら、よ、夜に音立てたりして、うるさくないかなあって」 「……あ、ああ!」  微妙な言い回しで言ってみれば、ようやく智駿さんは気付いたようだ。少しだけ顔を赤くして、照れ笑いしている。 「梓乃くん声大きいほうだもんねえ……」 「えっ、俺、やっぱり大きいですか!?」 「録音してみる?」 「いや、いやいやいやいや」  彰人に声が大きそうなんて言われても流せるけど、智駿さんに言われては受け止めるしかない。でも、声を抑えろと言われても……いつのまにか出てしまっているんだから、仕方ない。  やっぱり防音は大事だ、うん。 「……智駿さん何してるんです?」 「録音の準備」 「いやっ、し、しないですってば!」 「ちょっとだけだよ~」  俺が軽く羞恥に駆られていれば、何やら智駿さんがスマートフォンをいじって見慣れない操作をしている。  ――録音をする!? 本気で言っている!? 「こっちおいで、梓乃くん」 「ま、待って、それは流石に恥ずかしいですってばー……」 「すぐ消すからね」 「でもぉ……」  くい、を手を引かれて、智駿さんの前に座らせられる。そしてぎゅっと抱き込められた。きゅんとする前に視界に入ったのは、スマートフォンの画面に映る「録音中」の文字。  ……あれ、本気で録音する気? 「ち、智駿さん! すとっぷ!」 「んー?」 「あっ……!」  一応俺にも羞恥心はあるんですよ!……と言いたかった。けれど、それを言う前に、俺は甲高い声をあげてしまう。  智駿さんが、俺の乳首をシャツ越しに摘んできたのだ。ただでさえ乳首は感じちゃうのに……シャツ越しになると、布が乳首に擦れて余計に感じてしまう。 「んんっ……!」  でも、声を出したら録音されてしまう。俺は口元に手を当てて、ぎゅっと塞いだ。  ……それなのに。 「あっ、あっ……んっ、ぅ、」  俺の体が、智駿さんに触られて感じないわけがない。乳首はぷくっと膨らんで、ますます敏感になる。智駿さんが指の腹で乳首の先っぽを円を描くように撫でてきて……俺の下腹部がゾゾゾッ! と震え出した。  声が……でちゃう……。

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