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「し、白柳さん……ほんと、どうしたんですか……そういうの、困ります……」  じ、と見つめられて、体から力が抜ける。  ゆっくりと引きずり落とされていく感覚が、少し怖かった。どうせなら無理矢理たたき落としてくれればよかったのに、この男は俺の手を引いて少しずつ俺の心を結び留めようとする。慣れない感覚だから、怖かった。   「は、俺のことを散々困らせたのはどこのどいつだよ。おまえも少しくらい困りやがれ」 「……、クソ野郎」 「ほんと口悪いな。俺の前でも猫被ってくれればいいんだけど」  ぎ、とソファが音を立てる。その瞬間に、唇を奪われた。  俺は、目を閉じていた。なんの抵抗もなく、むしろ嬉しくてたまらなくて、こうして彼のキスを受け入れている自分に辟易する。  俺は自分の中にある白柳さんへの好意に怯えるようになった。まともに恋をした相手というのは白柳さんが初めてだったので、自分の心がなにかに囚われる感覚に、俺は恐怖を感じるようになったのだ。自由で在りたいという自分の夢が、壊れていくような気がしたから。だから、彼と距離を取った。  取った、はずなのに。 「あの……白柳さん……このソファ、硬いから……その……ベッドで……」  どうしても、俺は彼のことが好きらしい。

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