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第1話

「鹿狩中隊長って、アレだろ?オメガだって噂」 「ああ、前のトコに同期いるんだけどさ、マジらしい」 駐屯所へ到着した彼は、周りのザワつきなどは気にもしないように、バサついた髪をわしゃわしゃと掻き乱しながら、集合がかかった訓練場へと向かう。 すらりとした長身と綺麗に鍛えられた体躯のラインから溢れ出している雰囲気な、かなりの手練であるということだけだった。 集まった隊員たちも、目の前に立った彼から醸し出されるその圧に身震いをする。 「あー、おはよーございます。俺は鹿狩 統久(かがり すべく)、今日からこの駐屯地に赴任しました。ってことで、何かもう噂話されてるみてえだけど、俺はオメガなんで、たまーにお休みするから、よろしく」 眠たそうな表情を浮かべたまま、包む隠さずに自己紹介した彼を周りの隊員は、呆気にとられた表情になる。 オメガは身体が弱い者が多く、劣等種とされているので隠して仕事をしているのが普通である。 こんな辺境警備隊にいるはずのない性別である。 職業に性差をつけるのは、法律違反と言われるが、能力が不足しているのであればそれは問われない。 警備隊では、強靭な肉体とそして捜査ができる優秀な頭脳が必要だ。 「中隊長は、抑制剤を飲んで仕事に穴を開けない努力はしないのですか」 一人の真面目そうな隊員が食ってかかるように、彼に問いかける。 「抑制剤は効かないんでね。ベーターが殆どだと思うけど、君はアルファだろう?具合が悪そうな俺を見たら、鼻栓をしてね」 その隊員にひょいと鼻栓セットを手渡すと、彼は見蕩れるような爽やかな笑みを返す。 「意にそわない過ちは、お互い傷をおってしまうからね」

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