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第7話
薄暗い路地に入っていく背中を追い、シェンは昨日と同じ轍を踏まないとばかりに実弾銃を手にする。
光線銃であれば、反射や防光服など着られてしまっていてはかなわない。
統久は経験値はかなり高そうなので、右に倣えをする方がいい。
「潜入捜査だからな、別にここでドンパチはしかけねえよ、とりあえず情報屋と会うから、入れ」
顎先でさされたのは安いモーテルである。
流石に一瞬ためらうが、一緒に中に入ると無愛想な受付けが身分証を提示しろとリーダーを指さす。
男とモーテルとか罰ゲームだろ。
ため息をついてリーダーに腕につけたIDをかざして、統久の後ろをついていき、部屋に入る。
部屋の中は薄暗く淡い紫の壁紙と、キングサイズのベッドがこれみよがしに置いてある。
「シンジケートが動いたことは分かっているが、まだ、その場所や詳しい情報は得ていない。報酬を先渡ししろと言われてるんでな」
「はあ。それで情報屋とここで待ち合わせですか」
ソファーに座ると、何故か雰囲気に落ち着かなそうにシェンは銃に弾を装填し直す。
「シェン、お前は情報を得たら、すぐに潜入して欲しい。こっちは、囮捜査の準備にかかる」
「.....オレは単独行動ってわけですか」
シェンの表情が曇り、奥歯がギリギリと鳴って苛立ったように爪を噛む。
「潜入は単独の方が危険はないし、お前の経歴は見させてもらったよ。カルハード作戦に参加したそうだな」
「オレは敵に捕まっちまいましたがね」
ハッと笑うと、シェンは嫌なことを思い出したかのように僅かに眉を寄せる。
「それも知っている。しかし、あの作戦はお前の動きがなければ成功しなかっただろ。上が評価しなくとも、俺はそう評価するし、俺がコンビに指名したのもそれが理由だ」
「だったら.....オレが上官を信用できないのもわかるよな。悪いのですが、この件から降ろさせてください」
拳をグッと握ったシェンは、酷く激昂したように統久に詰め寄った。
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