20 / 62
第20話
前金として2000ドルを手渡されたが、いちいち細かい金額だなと思う。
シェンは準備期間として3日の休暇を与えられたが、正直こんなにトントン拍子に話が進むとは思ってはいなかった。
部屋に戻るとこちらに来る前に報告がある場合はと渡された回線へと通信を繋いだ。
『ハーイ!!こちらセクシーダイナマイトデリバリーです。ご指名どうぞ』
明るい野太い声に通信マイクを取り落としそうになりつつ、シェンは一瞬押し黙ると、通信番号と一緒に渡されたカードにかかれた名前を口にする。
「ハイルをお願いします」
「男オメガのハイルね。場所と時間をお願いします」
事務的に答える声に、丁寧に名前の下に書いてあるモーテルの名前と住所を告げて、時間を2時間後に指定して通信を切った。
何を考えてんだ。
デリヘルの男娼に情報の受け渡しを頼んでいるのか。
確かに。
シェンは与えられた宿舎の部屋の中をぐるっと見回す。
盗聴器や監視カメラは仕掛け放題か。
重要な任務をまかせるとして、追跡されることも考えられる。
こりゃ、前金に浮かれてデリヘル頼む馬鹿な男って設定だな。
実際、陰でこそこそ中隊長と会うわけにはいかない。
用意周到ではある。
オメガってことは、中隊長のダチか何かか。
狭いモーテルに入るとメイキングされたベッドの上に座り、シェンは息をつく。
来る前の状況と似ていて、何となくあの日のことを思い出す。
自分よりも肉体的にも能力的にも勝っている男がみせる痴態があれからも頭の隅から離れない。
ピンポンとチャイム音が響き、カメラに派手な赤色の髪が映る。
「セクシーダイナマイトデリバリーのハイルです」
低い声がドアの外から聞こえて、シェンは腰をあげてドアへと歩み寄って、それを開いた。
ともだちにシェアしよう!