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第24話

溢れ出すフェロモンの渦と自分の欲求に負けて溺れていたのは自分の方だと抱き倒した体を見下ろす。 衣服を着替えたシェンは乱れた髪をかきあげて、意識を失っている彼を見下ろした。 とりあえず、相手の動きは止めずに泳がせると。 一体何ヶ月かけるつもりか。 1度の取り引きで追い込みをかけるなら、早めに決着はつくが、長ければ長いほどボロを出してしまう可能性はある。 あの時の轍は踏まないと心には決めているが、体ごと賭けてくるこの男には流されそうになる。 「う.....ッ、ふ.....」 薄く目を開いて首を左右に降る様子を見やり、シェンは統久に財布から取り出した紙幣を手渡す。 紙幣の中には伝えられなかった決行の日時を示した暗号を通信番号にカムフラージュしてカードに書いて忍ばせた。 「少し寝ていきなよ、オレは仕事の準備があるから帰らないといけないけど」 まだ回っているカメラを意識して、髪を撫でる仕草をくわえてにこりと笑っで見せる。 統久はぼんやりとしたまま受け取った紙幣を見やり、カードの存在に気がついたように軽く眉を引き上げると、口元を緩める。 「もうすこし、一緒にいたいけど.....がまんする。連絡、するね」 甘く聞こえる健気な言葉を口にのぼせて、照れたように頬を染める様が顔の割に可愛らしく映り、演技ではなく思わずシェンは抱きしめてしまう。 やべえな。 つられてる。 えーと、なんだ、どう続けるかな。 「はやく、一緒に暮らせるように.....稼いでやるからな」 自分でも吹き出しそうになるくらい、ベタベタの演技をして、シェンは彼を惜しむように離すと、ジャケットを羽織る。 「.....3ヶ月たったら、オーナーはぼくをお得意さんに売ってしまうって。ねえ、3ヶ月でどうにか、して」 じっと見上げる視線が、意味ありげに絡みつく。 ハイハイ。 リミットは3ヶ月だな。 期間が決まっているなら、安心できる。 それ以上は危険だという判断か。その判断は多分正しい。 「わかったよ。何をしても.....200万ダラー手に入れてやるよ」

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