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第25話

3ヶ月で中枢近くまで潜り込めるかどうか、かなり派手な賭けに出るしかないかもしれない。 荷を肩に担ぐ動作で荷のひとつに、指に挟んでいた針状の爆弾を刺しこんでおく。 「イライズ君、経路はバッチリかね」 支部長がやってくると軽く肩をたたく。 「はい、まあ、休暇をいただいたので頭に叩きこみました」 ぼろを出すつもりはないが気をつけなくてはならならい。 シェンは、運転席に自分の荷物を載せる。 「休暇は何をしてたのかな」 「あー、経路の確認と、あ、えーと恋人とデートしたくらいですね」 そう言うと、支部長はニヤニヤとほくそ笑む。 商売男を恋人と勘違いしているイタイ奴を装うのも楽な仕事じゃないぜ。 「そうか。恋人か。じゃあ、素敵なプレゼントを買うためにも頑張らないとな」 多分カメラの中身を解析して、金が必要なことはリークされているのだろう。伺うような好色そうな視線に、シェンは照れた表情を作って笑う。 「からかわないでくださいよ。まあ、頑張りますよ」 潜入捜査は演技力が勝負である。 辺境に飛ばされた時はもう不要な能力だと思っていたが、意外に役立つのは早かったな。 運転席に乗り込み、ちらと支部長を見ると笑顔で手を振られる。 母艦を出て小さな振動音を感じて、シートの下を覗き込むと、時限式の加圧爆弾があるのを発見する。 設定時間は、引渡しの時間の1時間後である。 証拠隠滅のためだというのはわかる。 渋滞で遅れたら、どうすんだよ。 はなからこちらの命など、塵のようなものだってことだな。 信頼はまだされてはいない。 そんなことは始めから承知のことだ。 『シェン、取り引き相手の方がきな臭い。少し気をつけろ』 一方的な統久からの通信が耳に直接入ってくる。 こちらからの返答はできないが、こういう連絡はないよりあった方がいい。 気をつけるって言っても、引渡ししたら用済みなんだろうけど。 『そっちがわの後ろの組織同士が、抗争をしている。悪くすれば巻き込まれるかもしれない。危険を感じたらすぐに撤退してくれ』 とは言ってもこのヤマを手にしたいのは、アンタじゃないのか。 撤退はしない。 体まで張ったヤマなんだろ。 シェンは目的の惑星へ飛び込むように、加速をかけて運送機を飛ばした。

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