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※第30話

「どう考えたって、その仕事、死ぬ確率高いじゃないですか。勘弁してください」 パンデミックを引き起こして他人を巻き込む可能性とか考えたくない。 「君なら運べるんじゃないかな」 「どう高く買ってもらえてるのか分かりませんが、冗談じゃないですよ」 「じゃあ、今死ぬか。よく考えておけよ」 銃口をおもむろに向けられて、手にしていた袋を奪われる。 「返事は明日の18時までに連絡よこせ」 本部長はそう言うと、部屋を出ていく。 潜入してから2ヶ月、そろそろ引き返せない場所まで入りこんだ。 そろそろ、潮時かもしれない。 シェンは会議室を出ると、通信機を手にしていつもの番号に繋いだ。 『シェン、撤退だ』 呼び出した彼はいつものように、シェンのペニスを口に含んだまま、腕の発信機で言葉を伝える。 「君を身請けするには、その金が必要だから」 チャンスはチャンスではある。 細菌兵器などは生産すること自体が大犯罪である。 もう少し裏が取りたいが、返事をするまでの時間もさほどない。 ここで撤退しても意味は無い。 見下ろした統久の舌使いのうまさに頭がぼんやりしてくる。 「ハイル、このまま飲んで、いいだろ」 飲精を促した言葉に含ませた意味に、目をあげた統久は首を横にふる。 ここで撤退など絶対したくないとシェンが見返す。 「ん、っ、出して」 統久は呟くと、喉奥まで切っ先を飲み込んで笑みを浮かべた。 『ならば、作戦決行する前。今夜追い込みをかける。夜の21時、本社前だ』

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