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第34話

作戦変更ってもな。 たしかに体の中の兵器を運ばければ、こっちの命もないんだが。 ハメられてやる、か。 シェンは首筋を気にしながらも、本部長の言葉に興味をもったような視線を向ける。 「ハイルは警官で、オレを騙してたってこと.....。オレのものに出来る方法があるのか」 食い入るように頭を乗り出すシェンに気を良くしたように本部長は頷き、自分のこめかみに指先を押し当ててどんどんと叩く。 「記憶を奪って、快楽漬けにして誘拐したオメガを売っている裏組織に引き渡せばいい。アルファにも奪われないように監禁すれば、彼は一生君のモノだよ」 かなりリスキーじゃないか。 記憶を奪うだと。 オレに片棒を担がせて、中隊長さんをハメで誘拐すれば、組織のことも忘れて表沙汰にはならない。万が一外にバレてもお縄になるのはオレだけという寸法か。 「記憶を奪ったら、ハイルはオレのことも忘れてしまう!そんなのは、嫌だ」 「落ち着けイライズ君、いまの彼は演技をしているんだ。君を好きなわけじゃない。だからね、君がただ1人のご主人様だっていう偽の記憶に書き換えるんだよ」 秘密を共有するように囁く本部長は、本当に思いやりに溢れた口調で提案してくる。 いかに人の弱みをついて、ほだそうとするか。それができるのが、本当の悪党だ。 この作戦は危険すぎるぞと、どこで聞いているのかはわからないが、多分近くにいると思われる統久を探すようにぐるっとシェンは視線を回した。 『シェン、頼む。多分同じようなチャンスはもうこない.....。ここにたどり着くために5年かかってるんだ、頼む』 頼むからこの作戦に乗れという言葉に、シェンはため息を軽くつく。下手すれば、統久の人格すら崩壊しかねないプランだ。 知らないからな。 「ハイルをオレのモノにしたい。まずは、身体の中のものを運べばいいのですね」 首筋に手をあてて、任務のためのデータをくれと手を差し出す。 「頼むよ。イライズ君。彼を手に入れるための作戦は任務完了の後で話そう」

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