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第36話
5年かかったと言っていた。
情報を得るのに、金も身体も使ったのだろう。
仕事にそこまでして何の得になるのか。昇進すらどうでもいいと考えている人間に、何があるのか。
訳がわからかないという表情を浮かべてシェンは統久から手を離して、肩を落とす。
「報酬払ってくださいよ。金ではない方の」
そう言っておけば、少しは無茶をしなくはなるかもしれないという賭け。
統久はシェンの意図に気づいたのか否か、奇妙に顔を歪めると、軽く手のひらで目を覆った。
「.....やらしいヤツ」
「昔シンジケートを取り逃した後、施設で知り合った友達を拉致された。ちゃんと保護したと安心してたのに.....。油断してた、もう生きてはいないか、何も分からなくなって売り飛ばされたかしたかもしれない」
だけどと続けた統久の拳が小さく小刻みに震えているのがわかる。
「だけど.....俺は諦めらんねえんだ」
シェンはごくりと息を飲んで彼の様子を眺める。
ただ功をたてたいだけではない、その意思がそこからきている。
同情とか正義感とかそんなのではない。
だからと言って、危ない橋を渡らせるにもなと、シェンは眉をキュッと寄せた。
「.....片棒は担いでやる。報酬は忘れんなよ」
生きて戻れと言う意味をこめ、再度同じことを告げて、シェンは統久の肩を叩いて倉庫の入口へと向かって駆け出した。
殲滅を伝えるまで、3、4時間は欲しいがそこまでもつだろうか。
体内から兵器を取り出しただけだが何故か身体がすごく軽く思える。
ったく、お坊ちゃんは手がかかるってやつだ。
あっちも作戦は考えているだろうが、きっと甘いだろうな。
戻るまでに奪回するためのプランも練っておかないとな。
同時にシンジケート2つぶっ潰すプランだ、容易じゃないのは確かなんだけど。
どっちもやらなきゃ、明日はない。だな。
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