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第37話

「よく無事だったな」 本部長は労いの言葉をかけて、帰ってきたシェンを部屋に招き入れた。 「まあ、時間には届けましたから」 まるで何も知らない様子を装うと、シェンはどかりとソファーに腰を下ろした。 殲滅の情報を流したのか。 「あの地域でまさかテロの紛争があるとか、本当にびっくりしたよ」 本部長らシェンの思ってもいないことを言い出したので、シェンは心底驚いた表情を浮かべる。 どういうこと、だ。 警察に殲滅された、ことじゃないのか。 下手に聞き返すと怪しまれる情報に、シェンは慎重に言葉を探す。 「テロ?!そんな様子なかったですが」 「相手のオヤジさんはどんな服装だった」 確かめるような言葉に記憶をたどってシェンは考え込む。 「身体の中に兵器抱えてたんで、んな相手の服とか気にしてねえですけど、黒いスーツとピンクの派手なシャツだったかを着てましたよ、確か」 「よく覚えてるじゃねえか。あのオヤジはいつもピンクのシャツを着てるんだよ。似合わないのになあ」 カッカッカッと上機嫌に笑う本部長に、シェンは胸を撫で下ろしつつ、視線を合わせる。 「やっぱり、良く考えたのですけど、オレは騙されてても.....ハイルが好きなので」 「なんだ?作戦に乗りたくないのか」 本部長は笑いを止めるとカチリと胸元の光線銃のロックを外す音をわざとらしくたてる。 「あー、記憶を消すとか、危険な目に合わせたくないんですよ」 「ほお、よほどベタ惚れなんだな。こんなイライズの純情を弄ぶとかさらに許せないな」 本部長は、ひょいと小さな観光コテージのちらしを差し出す。 「金の用意は出来たと彼を呼び出せ。きっと仕事を辞めると言えば、まだ辞めるなというだろうからな。まだ情報を漏らしてなければ」 「はあ.....なんでこのコテージなんですか」 ちらしを手にしたまま、シェンは首を傾げた。 「これは我々の作った牢獄でな、入ればそこで生け捕りが出来るんだよ。彼は1人で数十の組織を潰した、我々にとっては天敵だからね」 「本当に、酷いことはしないでくださいよ」 願うように告げたシェンに、本部長はぽんぽんと優しい手つきで背中を叩いた。 「心配するな。出てきた時には、君を唯一の主人と認識する可愛らしいペットになっているからな」

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