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※第42話
「君は、この指輪をしたことも、次に会う時には忘れているだろうね」
じっと虚ろな目を覗きこんで、囁きながら胎内へと精を注ぎ込む。
本当に誘発剤で発情していれば、間違いなく妊娠するであろう。
「ーーッふ、あああ、ああアッ、やあ、あ、ッシェル、ああ、ッそ、んなしたら、はらんじゃ、う」
首を振りながら必死に抵抗しようとするが、抵抗にならずに、身体は甘く擦り寄り雄の動きをねだる。
「ああ、孕ませてやるよ.....、オレのもんにしてやる」
シェンは統久の脚を抱え込んで、グッと開かせると先でくいくいと子宮口まで叩きつけて、ニヤリと笑い唇を噛んだ。
「孕ませたのは、オレだと思い出せよ」
用意周到にベッドの下に置いてあった拘束具を、意識を失った統久の身体に装着していく。
分からないように鎖に力を加えてヒビを入れておいたが、洗脳されてしまったらそれも無意味かもしれない。
シェンは、汚した統久の身体を拭って僅かに血の滲んだ唇に指を這わす。
うまくいけば、いいが。
キイと寝室のドアが開いて本部長がのそのそと入ってくる。
「.....イライズ君、そろそろ引渡しの時間だが」
「本当に彼を返して、くれるんでしょうね」
心配でたまらないという表情を浮かべて、統久をギュッと胸の中に抱きしめる。
信じられはしない。
そのまま殺される可能性も高い。
最中に口に含ませた誘発剤は偽薬で、一緒にGPSのナノマシンを歯茎に埋めたが、それすら気づかれる可能性もある。
「君のためを思って手配している私たちを疑うのかな」
「そんなんじゃないです」
準備もなにもかも整えたが、まだ不安だった。
自分は逃げられる安全なところにいるが、1度手放したらもう取り返しがつかないような気もしていた。
チュッと指輪を嵌めた統久の手の指先に唇をあてて身体を離す。
「あまり酷いことはしないでください」
「本当に君は騙されていたというのに、愛情深いなあ」
ゆっくりと鉄格子を出ると、ちらと振り返って自分の指に嵌っている指輪をギュッと握る。
下準備はしっかりした。
あとは気取られるなよ。
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