42 / 62

※第42話

「君は、この指輪をしたことも、次に会う時には忘れているだろうね」 じっと虚ろな目を覗きこんで、囁きながら胎内へと精を注ぎ込む。 本当に誘発剤で発情していれば、間違いなく妊娠するであろう。 「ーーッふ、あああ、ああアッ、やあ、あ、ッシェル、ああ、ッそ、んなしたら、はらんじゃ、う」 首を振りながら必死に抵抗しようとするが、抵抗にならずに、身体は甘く擦り寄り雄の動きをねだる。 「ああ、孕ませてやるよ.....、オレのもんにしてやる」 シェンは統久の脚を抱え込んで、グッと開かせると先でくいくいと子宮口まで叩きつけて、ニヤリと笑い唇を噛んだ。 「孕ませたのは、オレだと思い出せよ」 用意周到にベッドの下に置いてあった拘束具を、意識を失った統久の身体に装着していく。 分からないように鎖に力を加えてヒビを入れておいたが、洗脳されてしまったらそれも無意味かもしれない。 シェンは、汚した統久の身体を拭って僅かに血の滲んだ唇に指を這わす。 うまくいけば、いいが。 キイと寝室のドアが開いて本部長がのそのそと入ってくる。 「.....イライズ君、そろそろ引渡しの時間だが」 「本当に彼を返して、くれるんでしょうね」 心配でたまらないという表情を浮かべて、統久をギュッと胸の中に抱きしめる。 信じられはしない。 そのまま殺される可能性も高い。 最中に口に含ませた誘発剤は偽薬で、一緒にGPSのナノマシンを歯茎に埋めたが、それすら気づかれる可能性もある。 「君のためを思って手配している私たちを疑うのかな」 「そんなんじゃないです」 準備もなにもかも整えたが、まだ不安だった。 自分は逃げられる安全なところにいるが、1度手放したらもう取り返しがつかないような気もしていた。 チュッと指輪を嵌めた統久の手の指先に唇をあてて身体を離す。 「あまり酷いことはしないでください」 「本当に君は騙されていたというのに、愛情深いなあ」 ゆっくりと鉄格子を出ると、ちらと振り返って自分の指に嵌っている指輪をギュッと握る。 下準備はしっかりした。 あとは気取られるなよ。

ともだちにシェアしよう!