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※第43話
目を開いた筈なのに視界は暗い。
手脚が重たいのは拘束されているからだろうか。軽く動かすと鎖の響きが少し鈍いところがある。緩めてくれているのか。
状況判断をくだすと、統久は腰をわざとらしくモゾモゾと動かして、左右に首を振る。
「ッん、っはぁ、シェル、シェル.....みえない、よ」
シェンが近くにはいないことは気配で分かっていたが、恋人に甘える声を出して腰をあげる。
「.....残念だったね。鹿狩統久君だよね、君の企みは全て露見しているんだよ」
くっくっくと笑う声は悪役らしく野太く、そして徐に手を伸ばして統久の肌に手を這わせる。
「ッ、て、ちが、う、ちがうッ」
シェンの飲ませた薬は偽薬だが、強烈な促進剤だとの話なので感じている演技をしなくてはいけない。
統久は触れられる度にビクビクと背筋を震わせて、たまらないように腰を押し付ける。
「おやおや、恋人以外でもいいのかい。シェル·イライズ君は怒ってしまうのではないかな。この映像は彼にも見せるからね」
耳元で囁きながら、開き始めている色づいたあわいに指先を伸ばして焦らすようになぞりあげる。
「ッンンンッ、ああ、ああ、ッ、はあ、ぼくは、ハイルだ、シェルのとこに戻して」
「ちゃんと調べがついているんだよ。君の記憶を消して、安全なオメガにしてから、ちゃんとイライズ君に返してやるから、心配するなよ」
つぷっと穴の中に玩具を埋め込み、様子を伺うような表情を浮かべると、黒服の男は無遠慮にその体を抱き上げて、ストレッチャーへと載せる。
少なくとも、ここは基地の中だろう。
玩具が体内で震えているのがわかる。
「暗い、の、こわい。あああっ、あああ、とっ、て、とって」
感じ過ぎて怖いのだという雰囲気を出すと、統久は腰を揺らしてストレッチャーをギシギシと揺さぶる。
男は仕方がないとばかりに、統久の目隠しを外す。
場所は、コテージではない。
灰色の鉄壁が見えるので、機体の中かどこかの建物だろう。
「ッは、あ、ああっ、ここ、どこっ、シェル、ああ 、シェルはどこっ、ぉ」
聞いて答えてくれるとは思わなかったが、統久は男に問いかける。
「コロニーだよ。凶悪囚人の矯正施設だ。」
オークションでの仲介は昔君に潰されたからねと、にっこりと笑うと、男は手にしたリモコンを弄って強いに設定した。
チャンスは、いま、だけだ。
統久は緩んでいる腕の拘束を少しずらして嵌めている指輪のスイッチを1度軽く押した。
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