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第45話

「これは遺品だ」 本部長が手渡してきた見覚えのあるリングを受け取り、シェンは呆然として理解できないと首を横に振る。 歯茎に忍ばせたGPSからは生体反応は消えてはいないので、本部長は嘘をついているのは明らかだ。 「意味が、わからない!!ハイルに何が!?」 「彼は企みが露見してすぐに、舌を噛んで自死したのさ」 「な、な、約束と違う!!」 怒号をあげてシェンが本部長に掴みかかると、黒服のSPがそれを止めて引きはがす。 「まさか、我々も彼が死を選ぶとは思わなかったのでね。君はベータだし、所詮オメガの手網など握れまいよ」 宥めるようにシェンの肩をたたいて、首を左右に振る。 「ハイルを、ハイルを返せよ!!人殺し!!ふざけるな」 我ながら熱血だなと思いながら拳を固めてSPを殴り、シェンは演技をしながら指輪を自分の指に嵌めてメモリを読み込む。 「うるさい、口を塞げ」 「この、嘘つき!!非人道!!返せよ!ハイルを、返せ」 さっさと助け出しに行かないとな。 猶予があるかと思っていたが、死んだことにするくらい話は山場に来ている。 この指輪の中には証拠品が入っているはずだ。 「死者をこの世に呼び戻す芸当は、私にはないよ」 辛辣な言葉を告げて、暴れるシェンをSPに任せると本部長は席を立つ。 「ああ、そうだイライズ君。君は退職を希望していたね。退職金も振り込んでおいたから、荷物をまとめて出ていっていいよ」 SPにつまみ出すように、指先を払う動作をして本部長は部屋を出ていき、SPはズルズルとシェンを引きずるようにして出口に向かう。 なるほど、汚いやり口だな。 シェンはSPにビルの外に放り出されると、カチリと指輪のデータを再生する。 「なるほど、ね。だから、オレはお偉いさんが嫌いなのよね」 状況は切羽詰まっている。 ある程度の準備はしたが、それが有効かどうかも賭けである。 すでに中隊長の人格が壊されてる可能性もある、な。 シェンは手に入れたデータを安全なところへ転送すると、自分の指に嵌めてあるもう一つの指輪を軽くさする。 「さて、行きますか」 シェンは宙港へと向かうバスにそのまま乗り込むと、さっきまでいたビルを睨みあげた。 「全部潰してやるからな」

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