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第62話
「俺は、昇進したくなかったんだがな」
統久は、叙勲式の後に唇を尖らせてシェンへと文句をつける。
内部汚職の問題も絡み、てんやわんやの大騒ぎの末に統久は西地区の監査部隊長に昇進し、シェンは副部隊長に抜擢された。
統久は今回の功績をすべてシェンにつけようとしたが、報告書にてシェンが洗いざらいぶちまけたので、改竄するなとこっぴどく叱責された上で、上は金勲章のメダリオンを二人に叙勲したのである。
「別に昇進してもいいだろ」
「……辞めづらい」
「おい、辞める気だったのかよ」
「目的は果たしたしなあ」
ちょっと今は燃え尽き症候群なんだと呟いて、監査部へと入る。
「海賊狩りは?」
「あー、シェンはやりたくないんじゃないの?」
「やりたくないけど、アンタがヤル気なら……まあ、手を貸すけど」
やりとりを交わしながら、新規配属先の監査部の中の視線が集まる。
半分くらいは、先の功績で監査まであがってきた連中ばかりで、シェンはホッとして仲がいいエンデの方へと歩み寄る。
「中隊長に昇進だっけ、おめでとう、エンデ。ホシあげたのお前でいいって言ったのに」
「ヤダ。オレちゃん、そんなしたこともない派手な活躍したなんて嘘つけなあい。で、なあ、あの後、しっぽりしたわけ?」
視線を好色そうに統久に向けるので、まあなとシェンは悪びれずに告げる。
「どうなの?どうなの?」
「最高だけどな。あれは報酬だからな、いただくまでは、ホントに死ぬほどこき使われるぜ」
「マジか。でも昇進もできるし、報酬もしっぽりかあ」
「その代わり、命が何個あっても足らんけど」
肩をそびやかせてひそひそと話していると件の統久が二人に近寄り覗きこむ。
「なーに話しているんだよ」
「何でもねえですよ」
二人同時に答えて顔を見合わせる。
「ふうん。まあいいや。とりあえず、エンデ、暇ならここの資料とデータ全部棚からもってきてくれ。あと、シェン、コーヒーが飲みたい」
「ほらな?人使い荒いだろ」
シェンはエンデの耳元で囁くと、ハイハイと言いながら給湯室へと向かっていった。
統久はコーヒーをもってきたシェンに、エンデから受け取りより分けたデータの山を指して、にっこりと笑って告げた。
「さて海賊狩り、やろうか」
END
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