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第61話

「オマエが孕め孕めというから、ついその気になっちまったよ」 どこか自嘲して呟く口調に、シェンはその気にさせるように言っていたのだからと返して、目を伏せる。 「それを言うなら、みんな自分の都合だよな。……番をもたないアンタが苦しむのをオレはみたくないんだよ。オレがどうもしてやれんのがわかるし……後悔はされたくない。大事な人が苦しんでいたら、オレは……」 オレはきっと何とかしてやって欲しいと、きっと彼を引き取りたいと言い出すアルファに差し出してしまうだろう。 目に見えてわかる苦しくて辛い将来を、回避したいのはオレのエゴだろう。 相性がいいのも、信頼出来る相手であるのもお互いに告げなくても分かっている。 「……そうだな」 統久はどこか遠い目をしてシェンが正しいと告げて、深く頷いた。 「シェンは、年下だけど……俺より大人だよなあ」 「……大人じゃねえよ。大体予想つくだろ………」 「俺は世間知らずだからさ。……オメガなのは12歳の判定で分かってたんだが、18歳までヒートがこなくてさ、学生時代は普通に学校に通えたし……アルファとかより俺様は優れてたから、そんなもんかと思ってたし、誰も差別はしなかったんだよ」 差別というか区別なんだろうけどなと、呟いて唇を舐める。 「……さっきまでの記憶がないのが素なら、性欲をいつも意志の力で抑えてるのか」 「そんなに難しくはない。とは言ってもヒートを抑えるのはできない。色々ごちゃごちゃ考えないでいいなら、セックスのことばかりになりそうなくらいの欲はあるよ」 腕を絡めてふわりとフェロモンをまとわせ誘うような仕草をみせる統久に、シェンは軽く目を見開いて首を横に振る。 流石に体力は限界である。 「別に悪いもんじゃない。いつか……大事なやつができたら、子供を産める身体だからさ」 「……そうだな」 「まあ、それまで相手してよ。いいだろ、シェン」 からかうように体をのしかかって顔を覗きこむ様子に、シェンはごくりと息を呑む。 「いや、オレは……アンタに自分を大事にしろと」 「……大事にしてるって。仕方ないだろ、性欲は発散しないと止まんないんだから。抑制ばっかしてると、ヒートで大爆発して辛いし。シェンも気に入ってるみたいだし、構わねえだろ」 甘い匂いを漂わせる相手に拒否権は行使できないようだ。 「ちょいまて、それを餌にまたなんか厄介事押し付ける気だろ」 今回はホントに死ぬほど危険だったじゃないかと身を引くと、統久は楽しそうに笑いそんなことないけどと告げて耳元に唇を当てる。 「さあて、次は辺境の海賊共を一掃するか」 「やべえッて、やつらはホントにやべえから……んぐ……ッ」 絡む腕と押し当てられた唇に吸い寄せられて、シェンは次第にその体を強く抱き返した。

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