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願わせて(1)

「メグ先輩、おはよー」 「おはよう」  バイト先であるカフェに顔を覗かせれば、いつものような柔らかな笑みを携えたメグ先輩の姿。  耳よりも少し長い亜麻色の髪がサラサラと風に流れた。優しく細められた瞳からは温和な性情が伺える。  まだ開店前の店内はどこか寂しげで、食器を洗う水の音だけが広がっていた。 「ハル、今日は早いね」 「早起きしてさ。メグ先輩こそ、なにしてんの?」 「新しいグラスを洗ってるんだよ。今日から使おうと思って」 「へぇ。じゃあ早く着替えて手伝おっと」  カウンターを通り抜けて、スタッフルームに入る。  個人用の棚から着替えを引っ張りだして、のんびりと着替え始める。  ここは、メグ先輩こと、桐宮(きりみや)恵利(めぐり)が経営しているカフェ。  俺はバイトとして雇われている。開店日である土曜日と日曜日に、営業時間の十時から十八時まで、まったりと働いているのだ。  ちなみに、従業員はメグ先輩と俺だけ。人目につかない場所にあることやSNSでの投稿の禁止など、知る人ぞ知るお店となっているため、客足は少ない。  そんな隠れ家のようなお店だから、メグ先輩と俺だけでも充分なのだ。  もちろん、味や見栄え、衛生面は訪れたお客さんからは高評価。リピーターも多い。中にはここで働きたいと申し出てくれる方もいるのだが、メグ先輩はそれを丁重にお断りしている。  曰く、俺以外の従業員は必要ない、だそうだ。  運良くこうして働けているのも、俺がメグ先輩の友人だったからだろう。

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