2 / 45

(2)

 メグ先輩は、俺が通っている大学の先輩だった。  この世界には男女をさらに細かく分けたα、β、Ω。全部で六つの性に分かれている。悲しいことに優劣がつけられる世の中で、メグ先輩は特別であった。  メグ先輩は上位を誇る、アルファの中のアルファであったのだ。  頭脳明晰、容姿端麗、才色兼備、文武両道……。 とにかく、全てにおいて一つも欠けがない。性格も優しく穏やかで、種別や性別に関係なく、誰にでも平等に接している。  大学で知らない人はまずいない、誰もが憧れの人。  そんな有名なメグ先輩に、俺は助けてもらったのだ。  それは、俺がオメガを襲いそうになってた時のこと。 「っはぁ、は……っ」 「やだ! やだやだぁ、やめてっ!」 「っ、うるっさいなぁ……!」 「ちょっとキミ、なにしてるの」  アルファの発情期に陥り、そこに居合わせてしまった見知らぬオメガに襲いかかる俺を、メグ先輩が制止に入ったのだ。  メグ先輩は、オメガの肩を掴む俺の手を力で退け、オメガを逃がした。そして、理性を失いかけて座り込む俺に、優しく声をかける。 「抑制剤は?」 「んなの、あるわけっ……、はぁ、はっ」 「アルファなのに持ってないの?」 「俺はっ、アルファじゃない……!」  どう見たってオメガを襲うアルファなのに、違うと否定する俺。  よくわからないと言った風に俺を見つめたメグ先輩は、俺のフラフラな足取りを支え、タクシーでメグ先輩の自宅まで連れ帰ってくれた。  そこで俺はアルファ用の抑制剤を飲ませてもらうと、ベッドに寝かされた。続けて飲んだ鎮静剤の副作用か眠くなり、俺はあっさりと眠りにつくこととなる。  目覚めれば、見知らぬ部屋に驚き、混乱した。  様子を見に来たメグ先輩に事情を説明してもらい、大いに反省したのだった。 「迷惑かけて、ごめん」 「大丈夫だよ。それより、熱があるみたいだから休んでて」 「熱なんか……」 「あるよ。多分、発情期の反動かな。アルファじゃないんでしょ?」 「……」  起き上がる俺をもう一度横たわらせ、メグ先輩はベッドに腰をかける。  言い訳をしようにもできない。そう思った俺は、どうにでもなれと、素直に話し始めた。 「実は、暫定ベータなんだよね」

ともだちにシェアしよう!