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いくつかの検査を終え、待合室で待つこと三十分。
ようやく名前を呼ばれてまた診察室へ入れたのは、二十時を過ぎた頃だった。
診察室へ入ってまず、掲示されたのは診断書。
見慣れた診断書の「予想される変化後の性」の欄を、俺は真っ先に確認した。
「後天性アルファ!」
「嬉しそうだな」
「当たり前じゃん!」
よかった、俺は本当にアルファになれる!
そう思うと嬉しくて、自然とこぼれる笑顔。そんな俺を、まーやんも笑みを浮かべて見てくれていた。
「お前さ、近くにアルファでもいんの? そうだな、希少種並の」
「希少種……かは知らないけど、いる。たぶん希少種なんじゃない?」
「結構な頻度で会ってんのか?」
「週二くらい」
「ならハルがアルファになれるのも、ソイツのおかげだな」
「メグ先輩の?」
どういうこと? と首を傾げれば、まーやんは机の上にたくさん立ててある本の中からひとつ、俺に差し出した。
暫定ベータについて。何の捻りもないタイトルが堂々と居座っている表紙を捲ってから、まーやんを見る。
十五ページ。その指示のままにページを開いた。
「"アルファ・オメガになるための効果的な方法"……?」
「アルファのところ、読んでみろ」
「えーっと……」
本への目を落とし、文章へと視線を走らせる。
そこには、俺も全く知らなかったことが載ってあった。
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